未来のクルマをコモディティにはしたくない

豊田社長は会見の中でこう述べている。「今のトヨタの課題は1000万台を越える企業規模をアドバンテージにするべく、自分たちの仕事の進め方を大きく変革することです。私たちが昨年4月に導入したカンパニー制も、マツダさんと一緒に仕事を進める中で、自分たちの課題が明確になり、『このままではいけない』と踏み出したものだと言えます。マツダさんとの提携で得た一番大きな果実は、クルマを愛する仲間を得たことです。そして『マツダさんに負けたくない』という、トヨタの『負け嫌い』に火を付けていただいたことだと思っております。本日私が皆さまにお伝えしたいことは、両社の提携は『クルマを愛する者同士』のもっと良いクルマを作るための提携であり、『未来のクルマを決してコモディティにはしたくない』という思いを形にしたものだと言えることでございます」。

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トヨタは2016年からカンパニー制をひき、各カンパニーにプレジデントを置いている(2016年4月当時のもの)。

コモディティとは一般化した結果品質での差別化が困難になった製品などのことだが、ここでは「パーツを組み合わせれば誰にでも作れるもの」という、生産側のコモディティ化という意味も含んでいる。アクセラ・ハイブリッドの件を「マツダには技術があってトヨタには技術がない」と受け取るのは早計である。技術はお金と無縁ではない。ヒト・モノ・カネが圧倒的に潤沢なトヨタの技術はそもそもマツダに負けるものではなかった。にもかかわらず、なぜ得意のハイブリッドで負けたのか、トヨタはそれを深刻に受け止めて、自らの改革に着手したのである。技術があってもそれだけではいいクルマは作れない。クルマのあるべき姿を定義する意思決定の速度と、リファレンスを共有する目的統一の困難がそうさせた可能性が高い。だったらどうするかを考え抜いた形がTNGAであり7カンパニー制である(参考:「プリウスはカッコ悪い」豊田章男社長インタビュー【前編】 http://president.jp/articles/-/20121)。

相互にリスペクトする関係

一方、マツダの小飼雅道社長はトヨタをどう見ているのだろうか。会見で小飼社長はこう述べている。

マツダの小飼雅道社長

「リーダー企業でありながらも、もっといいクルマを作ろうと、自ら先頭に立ち、課題に挑戦し続けておられる姿勢に私は強く胸を打たれております。このようなトヨタさんの志と、マツダのDNAである『あくなき挑戦』が合致し、この2年間多くのことを学ぶ機会をいただいたことをとてもありがたく感じております。胸襟を開いてお互いを知り、頻繁な交流により多くを学び、お互いが刺激しあえる状態であることを確信し、自信を深めて今この場に立っております」

つまり相互に高いリスペクトを持ち、ライバル企業としての警戒レベルを下げて「胸襟を開く」ことで、自動車業界を襲う未曾有(みぞう)の事態に対応していきたいと言うことだろう。