今年6月から改正酒税法などの施行で国税庁が酒の安売り規制を強化し、ビール類の店頭価格が1割ほど上昇した。その反動で、6月以降のビール売り上げは低迷している。これはビール業界にとってピンチではあるが、チャンスでもある。
ビール業界には構造的な問題が大きく2つある。1つは飲酒人口の減少、いわゆるビール離れだ。もう1つはデフレ。つまり安売り競争が過熱して、薄利多売に陥ってしまっていることだ。消費者が減って、単価も下がれば、ビール市場が持続的に成長していくことは難しい。
酒税法改正によって、ビールメーカーから小売店へのリベート(販売奨励金)の負担が減れば利益率は高まり、追い風の面もある。また税率変更によって発泡酒や第三のビールが増税、ビールが減税されるため、より単価の高いビールを売っていくための強みともなりうる。
そもそも日本のビール業界は、アサヒならスーパードライ、キリンなら一番搾りなど、各社がコア商品に頼りすぎていた。結果、売り場には同じ商品が並び、変化に乏しかった。生産商品を限定することで生産効率を上げる、装置産業型のビジネスモデルに終始していたのだ。
若者がビールに魅力を感じなくなったことはある意味必然で、ウイスキーやチューハイは人気が再燃していることを考えれば、本質的には飲酒人口の減少ではなく単なるビール離れが起こっていると言えるだろう。
ビール業界は今回の酒税法改正を機に、消費者にとってより魅力的で付加価値の高い新商品を開発してほしい。米国では小ロットだが高価格のクラフトビールが人気を集め、盛り上がっている。日本では市場の1%ほどと言われるクラフトビールだが、米国では10%を超える。
ビール各社も少しずつ新商品開発を進めてきている。チャンスを生かすも殺すも、今後の努力次第だ。
(構成=衣谷 康)