銀行から現金を引き出すために、コンビニに駆け込む人も多いのではないでしょうか。今ではすっかり定着したコンビニのATMですが、その先鞭をつけたのがセブン銀行です。銀行のビジネスモデルは、預金を集め、それを融資して利益を上げるのが一般的です。それに対して、セブン銀行の事業はATMのみです。なぜ、このようなビジネスが成功できたのでしょうか。

軽自動車の相互OEMに近い

セブン銀行のATMは1日1台あたり約100件利用されている。(時事通信フォト=写真)

セブン銀行のようなビジネスは、「協調戦略」と捉えることができます。協調戦略とは、「競合企業とできるだけ競争をしないで共存を図る戦略」です。同業他社は、競合企業と位置づけてしまいがちですが、協調することによってウィン-ウィンの関係を築けるケースも少なくありません。

なお、「競争せずに共存を図る」というと、談合やカルテルを連想するかもしれませんが、そうした非合法な手段は協調戦略には含めません。

競合他社と提携する協調戦略は以前から存在しています。例えば、軽自動車業界では、製品ラインを維持しながらも効率を追求するために、相互OEM(相手先ブランドによる生産)が行われてきました。また、航空業界では、各国の航空会社同士でアライアンスを組み、共同運航便やマイルの相互乗り入れなどが行われています。

こうした従来の協調戦略では、企業のバリューチェーン(価値連鎖)自体が変化することはありません。バリューチェーンとは、企業が生む価値を表すものであり、その主活動は研究開発、購買、製造、出荷、販売、サービスなどで構成されます。自動車業界の相互OEMも航空業界のアライアンスも、各社の主活動のいずれかがなくなるわけではありません。