―「焦りすぎない」という意味は。

堀江 孫さんは、最大限のスピードでやっているのかもしれませんが、僕のスピード感からするとちょっと遅いと思う。だからこそ、世間的にはちょうどいいんでしょう。彼が考えていることもある意味、受け入れやすい。30年ビジョンを語ったり、創業した会社に一生を捧げるというような話は、普通のサラリーマンでも「立派だ」と共感しますよね。

僕はそういう意味では速すぎるから、ある程度ブレーキかけながらやらないと。30年かければそりゃできるでしょう。でも、僕は仕事以外にもやりたいことがあったし、寝食忘れて働くのには限界があるから、30代半ばくらいで1回終わらせたいと思って焦ってた。

―堀江さんと孫さんはどちらもIT業界で会社を急成長させ、社会に大きなインパクトを与えましたが、なぜか堀江さんにだけ悪役イメージがあるようです。

【堀江】マスコミのプロパガンダと、それによる世間の思いこみでしょうか。あと、僕の言っていることがスピードが速すぎてわからないからじゃないですか。

例えば「テレビ局買収して何やるんですか?」と聞かれたから、「ライブドアってテレビ局に変えて、ライブドアドットコム、と番組に出すんですよ」と端的に答えると、もうほとんどの人が理解できない。要はテレビ局をNHKのような有料課金型に変えて強固な収益基盤をつくり、いいコンテンツをつくる体制を構築するのが本質なんだけど理解されない。

実際、今になってテレビ局の収益が悪化し始めてますよね。そこにきてやっと同じようなことを言う人が出てくる。

みんなが考えていないことをやらない限り、超過利潤は得られませんから、そんなに理解されるわけはないんですが。そういう意味では、孫さんはものすごく先進的なことはやっていないんです。

今、ソフトバンクの加入者数を牽引しているのはiPhoneですよね。アメリカでいい感じで普及したところで日本にポンと持ってきたけど、孫さんはiPhoneを生み出したわけじゃない。否定はしないけど、僕からするとつまらない。