「ソニーは規模ではなく、違いを追求する」

エレキの黒字転換を強調しながら、平井氏が背後にある大スクリーンに、昨年の同説明会で使用したソニーの設立趣意書のスライドを再度、大きく映し出していた。そこには「原点へのチャレンジ」とあった。つまり、テレビの黒字転換の背景には、彼らが原点へのチャレンジに務めた結果という含意がある。

平井氏が意図するように、原点へのチャレンジによって、果たして現在のテレビ事業は進化発展し、再びソニーの稼ぎ頭になるのだろうか。

ソニーは、テレビ事業のコスト削減のため、パネルを他社から調達する方針に転換している。5月8日に発表した65型と55型の有機ELテレビ(A1シリーズと呼ぶ)に採用したパネルも、この方針に従い韓国のLGから外部調達している。もともとソニーは業界ではじめて有機ELパネルを開発、製品化した企業だ。今から10年前、2007年に発売した11型の「XEL-1」は大きな話題となった。ところがその後、同種の製品の展開は見られなかった。これとは対照的に、LGは大型の有機ELテレビの開発に取り組みつづけた。そして2015年には、業界で初めてパネルサイズ55型という大型の有機ELテレビを日本で発売している。ソニーが調達したのは、そのLGが製造した有機ELパネルである。

ディスプレイパネルはカラーテレビの基幹部品中の基幹部品だ。平井氏は有機ELテレビ製品化の説明の中で、こんなコメントをしている。

「ソニーは規模ではなく、違いを追求する」

テレビの世界でもソニーは違いを追求し続ける、違いを生む能力があるのだ、というのがテレビ事業に対する姿勢の説明だった。だから"テレビ事業は、分社化はしてもソニーから切り離すことはしなかった"と付け加えた。同時にこの説明の中で、テレビとは反対にソニーから切り離す決断をした対象の事業として、パソコン事業「VAIO」をあげている。VAIOを切り離した理由については「(製品としての)違いを追求するのが非常に難しかったから」と語った。