安倍政権の擁護を「巧みに書く」

ところが、政府は明らかになった記録文書を信用性のない怪文書として扱う。17日午前、菅義偉官房長官は「どういう文書か。作成日時だとか、作成部局だとか明確になってないんじゃないか。通常、役所の文書はそういう文書じゃないと思う」と述べ、その後、文科省も松野博一文科相が「文書の存在は確認できなかった」と答弁している。

こうした政府の対応に朝日新聞は25日付朝刊で、文科省の前川喜平前事務次官の「事務次官在職中、問題の記録文書を確認している」との証言を掲載する。さらに同日、前川氏は記者会見まで行い、「記録文書は本物だ」と説明した。

朝日の社説は「前次官の証言 国会の場で解明せよ」(26日付)、「論点をすり替えるな」(31日付)と勢いづく。毎日の社説も「もう怪文書とは言えない」(26日付)、「『加計』の解明拒む安倍政権 その姿勢が行政ゆがめる」(31日付)と鋭い主張を展開する。

ところがである。朝日や毎日のような安倍政権を批判する社説に対し、保守色の強い読売新聞や産経新聞の記事や社説は安倍政権擁護の姿勢を貫く。単純に貫くのではなく、論を展開しながら巧みに貫くのである。

読者が思わず納得してしまう書き方

たとえば5月27日付の読売の社説。「前次官が在職中の政策決定を公然と批判する。異例の事態である。政府には、疑惑を払拭する努力が求められよう」と書き出した後、「疑問なのは、前川氏が国家戦略特区による獣医学部新設を『極めて薄弱な根拠の下で規制緩和が行われた』と批判したことだ」と指摘する。

この社説は何を言いたいのだろうかと思って読み進むと、次に「獣医師の需給見通しなどが十分に示されないまま内閣府に押し切られたとして、(前川氏が)『行政のあり方がゆがめられた』とまで語った」と説明し、「これが事実なら、なぜ現役時代に声を上げなかったのか」と書く。

ここで初めてなるほど、読売社説は前川喜平前次官を批判したいのだなと読者は気が付くが、そのときはもう遅い。

「規制改革を主導する内閣府と、業界保護の立場から規制の例外を認めたくない関係省庁が対立することは、ままある」と説明し、加計学園問題に関するこれまでの野党と政府の対立を具体的に並べ、「政府は、特区を指定した経緯や意義について、より丁寧かつ踏み込んだ説明をすべきだろう」と主張する。そして最後には「規制緩和は安倍政権の重要政策であり、仮に首相が緩和の加速を指示しても問題はあるまい」と述べる。読者はその通りだと思わず納得してしまう。

読売新聞はこの社説を出す5日前、「前川前次官出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」との見出しを付け、前川氏のスキャンダルを特ダネとして社会面に掲載する。推測だが、このタイミングでこのニュースを掲載する以上、政府側が読売にたれ込んだ可能性が強い。下ネタで問題の焦点をぼかしして相手を攻撃し、世論を見方にしようとする作戦はこれまでもよく使われた。