トランプ米大統領周辺とロシアとの不透明な関係を巡る疑惑「ロシアゲート」。読売は社説で「法秩序を揺るがす重大な事態である」と正論を吐く一方、毎日は「真正面から大統領の疑惑解明に取り組む米国がまぶしく思える」と書く。新聞人としての自覚をもつのは、どちらか――。

読売は「言語道断」と指摘

先週末、ロシアとトランプ陣営が癒着していたという「ロシアゲート」疑惑で、FBI(米連邦捜査局)のコミー前FBI長官が「トランプ大統領から圧力を受けた」と米上院で証言した。トランプ氏の言動は司法妨害であり、弾劾による罷免の可能性もある。コミー氏の証言でトランプ大統領は最大のピンチに追い込まれた。

コミー前FBI長官が公聴会で証言(写真=ロイター/アフロ)

この事態に日本も新聞各紙も大きく反応し、社説でも真相の解明を求める主張を展開した。なかでも読売新聞の社説(6月11日付)は「『捜査中止指示』の証言は重い」との見出しを掲げ、「トランプ氏の周辺に降りかかる疑惑を封じ込めることが目的なら、言語道断だろう」と指摘し、「トランプ氏は、自らの言動が政権の大混乱を招いていることを自覚せねばなるまい」と手厳しく主張する。

そこまでおっしゃるなら、なぜ、世間を騒がせている国有地売却にからんだ森友学園問題や、獣医学部新設をめぐる加計学園問題に対し、あれほどまでに安倍政権を擁護するのだろうか。

余談だが、永田町界隈では森友学園と加計学園の両問題を合わせて「もりそば・かけそば疑惑」と呼ぶそうだ。

「法秩序を揺るがす重大な事態」

話を読売の社説に戻そう。11日付の読売社説は冒頭から「米大統領自ら、連邦捜査局(FBI)のトップに対し、捜査に手心を加えるよう働きかける。そんな不当な介入が事実なら、法秩序を揺るがす重大な事態である」と書き出し、コミー氏が証言したトランプ氏との会話の内容をこうまとめる。

駐米露大使との接触をめぐり、捜査対象となったフリン前大統領補佐官について、トランプ氏は「大目にみてくれることを望んでいる」と述べた。コミー氏は、「捜査中止の指示だ」と認識したが、従わなかった。トランプ氏は、長官人事とからめ、自らへの「忠誠」を求めたり、対露癒着疑惑の捜査の早期終結を暗に要求したりもした。

読売社説は「違和感を禁じ得ない振る舞いだ」と強く批判するが、私(沙鴎一歩)もまさしくその通りだと思う。