「安倍政権の御用新聞」と批判を受けている読売新聞が、6月25日の社説でついに「政権批判」に転じた。「国会議員の劣化を放置するな」として、豊田真由子衆院議員の自民党離党を厳しく問う内容だ。その真意はどこにあるのか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が分析する――。

豊田議員の「常軌を逸したパワハラ行為」

読売新聞が社説で、自民党政権を批判したのは久しぶりではないか。6月25日付の読売社説(2本あるうちの2番手)。パワハラ問題で自民党を離党した豊田真由子衆院議員のケースを皮切りに、ここ数年問題を起こした自民党議員を列挙し、自民党政権の驕りと緩みを指摘している。面白い内容だが、気になるのは、この社説の真意である。

一方、同じ日曜日の朝日新聞と東京新聞は、別の角度から安倍政権を批判する。ともに大きな1本社説で「森友・加計問題」の背景にある官邸主導政治の悪弊を指摘し、政治家と官僚の正しい在り方を模索している。

まずは読売社説から見ていこう。見出しが「豊田氏自民離党」「国会議員の劣化を放置するな」だ。書き出しがこれまたうれしくなる。「常軌を逸したパワハラ行為である。最近の国会議員の劣化には、あきれるほかない」と書き始め、豊田衆院議員の自民党の離党理由について「乗用車を運転中の秘書に『死ねば。生きている価値ない』などと暴言を浴びせたうえ、顔や背中を殴る暴行をはたらいた問題の責任を取ったものだ」と説明する。あらためて豊田議員のパワハラ行為を読まされると、開いた口がふさがらなくなる。ひどい。やり過ぎである。

読売社説は次に「豊田氏は、東大法学部卒で、旧厚生省に入省した元官僚だ。2012年衆院選で初当選し、文部科学政務官などを務めた」と彼女のご立派な経歴を紹介する。

問題議員ばかりの「自民2012年問題」

最高の経歴だが、常識というものがまるでない。「春の園遊会では、本来は入場できない母親を強引に入場させて警備とトラブルになるなど、問題行動が表面化していた」とも書く。そのうえで「こうした非常識で適格性を欠く国会議員がなぜ、これまで要職を務めてきたのかという、根本的な疑問もわいてくる」と指摘する。この後、読売社説は何を言い出すのかと思って読み進めると、自民党の問題議員の名前とその愚行を次々と挙げる。

金銭トラブルで離党した武藤貴也氏、不倫問題で議員辞職した宮﨑謙介氏、「長靴業界はもうかった」と発言した務台俊介氏、女性問題を起こして政務官を辞任した中川俊直氏、「がん患者は働かなくていい」と発言して都連副会長を辞めた大西英男氏……。

読売社説によると、自民党では『2012年問題』が指摘され、豊田氏を含め12年に初当選して現在2期目の衆院議員がさまざまな不祥事を起こしている。