そりゃだめっすよ!
だって……あれ?
自由貿易のメリットって何だっけ?
あれ?
TPPって自由貿易だっけ?

 

あほたれ!

 

出た! スミヤン!

 

おまえもグローバル社会に生きるいっぱしの社会人なんだから、自由貿易の意味くらい知っておけ!

 

まずTPPというのは、「関税をお互いに減らして、自由に貿易しよう」という条約だ。

 

TPP=自由貿易なわけね。

 

イギリスの大経済学者のリカード先生(1772-1823年)は、
「比較優位」という貿易の原理を発見し、
「自由貿易したほうが、みんながトクする」と主張したのだ。

 

比較優位?

 

2国間においては、それぞれが自国で得意な産業に特化し、
苦手な分野は適切な交換比率で他国から輸入すれば、
貿易をしなかったときよりも全体の生産量が増える。
だから、お互いの国がトクをするということだ。

 

編み物は苦手で魚ばっかり釣ってくるオレ。
釣りは苦手で編み物ばかりしてる姉ちゃん。
オレは姉ちゃんに魚をあげて
姉ちゃんはオレにセーターをくれるのがいちばんってことね?

 

そういうことじゃ。

 

日本とアメリカは、オレと姉ちゃんみたいにウィンウィンの関係なのかな?

 

日本は、自動車を作るのは得意だけど、土地が狭いから農業は苦手。
米国は、自動車は日本に及ばないが、農業は得意。
ならば、日本が大量の自動車を作って米国に輸出し、
米国が大量の農産物を作って日本に輸出すれば、
全体の生産量が増えて、両国ともハッピーになる、というのが
TPPの考え方の基本じゃ。

 

でも、日本より得意なことがひとつもない
発展途上国とは、自由貿易したって仕方ないんじゃない?

 

実はそんなことはない。
例えば、おまえの先輩営業マンは優秀だ。
先輩の提案力は、おまえより1000倍ある。

 

先輩はたしかに優秀だが、オレの1000倍も提案できるわけじゃない。
あと、こんなポケーとしてないから!

 

何を! アポを取る力も提案力もないくせに!

 

おいおいアポは先輩にちょっとしか負けていないぞ。
アポの新ちゃんってここらじゃ有名よ。
オレだって先輩ほどじゃないけど、優秀な営業マンなんだから。

 

そしたら、お前は「比較的」得意なアポ入れに専念し、
外回りの営業は先輩に任せる。
そうして分業する方が、分業しないよりも
結果として全体の成果はあがる。

 

あ! なんとなくそんな気がする。
貿易も同じってこと?

 

そう。
それぞれの国が分業したほうが全体としては生産性が高まるんだから、
なるべく自由な貿易をして、みんながハッピーになりましょうや、
というのがTPPの発想じゃよ。

 

じゃあ、どうしてトランプはTPPを離脱したの?

 

経済学的には、米国全体にとっても、TPPは良いものだ。
しかし、政治の世界となると、また違う問題がある。

米国全体にとってはよくても、
苦手な産業に従事している労働者にとっては死活問題だ。
だから、米国の自動車労働者からすると、TPPは不愉快なのだ。

トランプ大統領は選挙の時にTPP離脱を公約して
自動車労働者の支持を受けた。
その公約を守ったということだ。

 

なるほど~。

 

自由貿易で世界全体がハッピーになるのはいいことだと思う。
だけど、分業のせいで自国の産業が壊滅状態になったら、
仕事を変えないといけない人も出てくるだろう。
そうすると個人にとってはハッピーだと言えるのだろうか?
TPP交渉が一筋縄ではいかないのもわかるな。

 
監修 塚崎公義
久留米大学商学部教授。1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。経済分析、経済予測などに従事し、2005年に退職して久留米大学へ。『なんだ、そうだったのか! 経済入門』など著書多数。