航続距離、パワー感、充電方式の改善

顧客からの不満はよほどのものだったのであろう。今回発売された新型プリウスPHVでトヨタ関係者が一番力説していたのは、そのEV性能の抜本的改善だった。

内山田竹志・トヨタ自動車会長が新型「プリウスPHV」を発表。

PHEVの特徴であるEV走行の部分が大幅に強化された。バッテリーの容量は旧型の4.4kWhから8.8kWhへと倍増。EV航続距離は旧型がJC08モード走行時で26.4kmにすぎなかったのに対して同68.2km、スポーツタイヤを装着しても55.2kmと2倍以上に。計測条件の厳しいアメリカの公称値でも25マイル(約40km)に達している。満充電でスタートした場合、都市走行でも2時間前後のEV走行は十分に期待できる。この一点だけでも新型プリウスPHVは旧型に比べて格段にEVらしくなったと言えよう。

航続距離だけではない。充電方式も旧型が交流200V普通充電のみだったのに対し、EVの国内標準規格であるChaDeMo急速充電と家庭用の100V充電の3方式に対応したことも、トヨタ関係者が強調していたポイントだった。遠出のとき、途中でバッテリーの残量が下限に達しても、急速充電20分でフル充電の80%まで回復させることができ、再びEV走行することができるようになったのだ。

モーターパワーも増強された。現在販売されているプリウスの第4世代モデルのシステムに手を加え、強めの加速のときには通常の走行用モーター(53kW)に加え、普段は発電機として使われているもうひとつのモーター(23kW)も走行に使えるように改良した。

旧型のモーターは60kWと数値的には新型より強力だったが、バッテリーだけではそのフルパワーを出すことができず、実際に走ってみるとエンジンがかかるケースが多かった。北米モデルのスペックシートによれば、新型の場合、バッテリーだけで最大68kWの出力を確保できるらしい。

昨年夏、新型の試作モデルを千葉のクローズドコース、袖ヶ浦フォレストウェイでドライブする機会があったが、サーキットのストレートでもAT車であればキックダウンするくらいまでアクセルを踏み込まないとエンジンはかからなかった。

航続距離、パワー感、充電方式の3点で、新型プリウスPHVの“EV度”は旧型とは比較にならないくらいに向上した。ノーマルのプリウスと差別化された外観とあいまって、商品力は大きく向上したと言える。価格は上級モデルになると400万円をゆうに超えるなど、いまだにかなり高いが、旧型に比べると売れるポテンシャルはかなり向上したとみていいだろう。