さらに切り札がある。太陽電池だ。屋根という屋根に太陽電池を敷き詰めるのだ。太陽電池の実勢価格は現在1キロワット当たり40万円程度である。これに各種の補助金がついて最終的には30万円もあれば設置できる。電力会社が電気を買い取ってくれる制度もあり、お得な投資物件でもあるのだ。

仕上げは窓の二重ガラス化だ。これによって冷暖房効果は2倍近くになる。実は先進国の中で1枚ガラスを常識だと思っている国は日本だけで、世界では二重ガラスが当たり前だ。二重ガラスは、防音やカビの原因となる結露を防止する効果もあり、いいことずくめである。

買い替えや改修が間に合わなくても策はある。文部科学省の独立行政法人、科学技術振興機構によって設置された組織で、私がセンター長を務める「低炭素社会戦略センター」では節電方法について研究している。

夏の電力需要がピークを迎えるのは午後2時から3時までの1時間。その間、エアコン、掃除機、洗濯機などを使わないことでどのくらい電力がセーブできるかを調べたところ、東電管内の全家庭が協力した場合、531万キロワットになると判明した。利用時間を変えれば計画停電が不要になるのだ。問題は呼びかけにどのくらいの家庭が応えてくれるかである。

そこでこの6月に実験を行う。横浜市、川崎市、東京・荒川区に協力いただき、各自治体でモニターとなってくれる家庭を100世帯ほど選ぶ。モニター家庭には、どんな家電がどの時間にどのくらい使われたかを記録するメーターを設置させてもらう。東電からは分単位で全体の電力消費がわかる機器を借り、両者の結果を突き合わせながら、電力を食う家電の利用を控えてもらう時間を設定する。実験結果をもとに計画を修正し、ピークとなる8月に本番を行う予定だ。その際は各自治体の教育委員会を通じて協力を呼びかけることになるだろう。

こうした複合技によって計画停電はやらなくても済む。20世紀の社会は、GDPを増やすにはエネルギー供給も増やさなければならないのが常識だったが、21世紀はエネルギーを減らしてもGDPは増やせるというのが常識になる。今回の震災を、こうしたパラダイムシフトを加速させる好機にすべきである。

(荻野進介=構成)