アメリカなど英語圏に本拠を構え、世界市場を相手に戦っている日本人起業家は「孫の英語」をどう聞くか。
ヨシダグループ会長 吉田潤喜
1949年、京都府生まれ。アメリカにあこがれ、高校卒業後に単身渡米。空手道場経営のかたわら手づくりした「ヨシダソース」が大ヒット。『「人儲け」できない人生ほどつまらないものはない!』(こう書房)などの著書がある。
 
ブイキューブ社長 間下直晃
1977年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中の98年に起業し、ネット関連事業に参入。その後、独自のWeb会議システムを開発し、2008年からは同事業で国内首位を堅持。経営するブイキューブは13年末、東証マザーズに上場した。

自分の尻を叩きながら走る

まずは、アメリカ・オレゴン州で「ヨシダソース」の製造販売ほか18社のグループ企業を経営する吉田潤喜・ヨシダグループ会長の話から。

「孫さんのプレゼンを聞いて、改めて思ったことがある。人生も商売も、ほらを吹いてなんぼ。スティーブ・ジョブズや本田宗一郎、松下幸之助という人たちは、思えばみんなほら吹きなんだ。孫さんも同じ、大ぼら吹きだ」

愉快そうに笑って、こう続けた。「孫さんは言ってるよね。『地方で頑張っている小さい通信会社のみなさん、アメリカの携帯通信は上位2社の寡占で消費者が損をしている。あなた方も不本意な戦いを強いられている。これからは手を組んで戦おう。テクノロジーや投資で協力するから、一緒にやろう』(テキサス州サンアントニオの講演)と。大胆なことを言うなあと思うよ」

吉田自身もほら吹きだ。「わしも貧乏な育ちだけど、ほらだけは吹いた(笑)。小さいころ、おふくろに楽をさせたくて『わし、大きくなったら母ちゃんに島を買うたるんや!』と言っていた。それを聞いたおふくろは『どうせやったら、おっきな島を買うてや』。この言葉がなかったら、いまの成功はなかった。日本では、ほらなんて吹いたらダメだと教えるけどそれは違う。ふつうの人ができないと思っていることを『やるぞ』と宣言するのがほらなんだ。その言葉をあとからパッションで追いかける。自分で自分の尻を叩きながら走るんだ。孫さんだって同じじゃないかな」

一方、Web会議システムを開発・販売するブイキューブの間下直晃社長は、アジアなど海外市場を開拓するため、シンガポールに駐在して日本を含む全社の指揮をとっている。間下が感嘆の声を上げる。

「早くから海外展開を進めているイメージが強いので、孫さんの英語はネーティブ風の流暢なものだと勝手に想像していました。ところがスピーチを聞くと、シンプルな英語をゆっくりと話している。僕なんかでは到底追いつけないと思っていましたが、これならできる(笑)。ますます海外展開を頑張ろうと決意しました」

間下が指摘するとおり、孫が話す英語の特徴はネーティブでなくても聞き取りやすいということだ。間下にも思い当たることがあるという。

「僕たちのビジネスの主戦場はアジアです。欧米と比べてビジネスマンの英語のレベル差が激しいので、アメリカ流の早口のプレゼンより、孫さんのような話し方のほうが幅広く受け入れられると思うんです」

(文中敬称略)