世界中の選挙結果でどん欲に儲ける「強欲資本」

原油などの先物価格は、世界の政治状況で動くことが多いため、例えば「中東で紛争が起きたという噂」を引き金に動くことがある。そうした時、その「噂が出たという情報」をライバルより一瞬でも早くつかんだものが、大きな利益を手にできる。これは、原油や穀物などの「商品の先物市場」専門のベテラン投資家が教えてくれた実話だ。

今、「一瞬の早さ」の競争も激しさを増して、さらに過熱して極限の状態にある。売り買いを専門に行うコンピューターが導入されて、例えばコンピューターが「グラフの上昇」を見つけると、一瞬にして買い、次の一瞬に売って、また買ってまた売る行為を繰り返す「自動取引」が、常態化している。「1万分の1秒単位」を競う世界だ。実際、グローバルな飼料穀物である大豆が豊作か不作かを知らせるため「アメリカ当局による月に一度の収穫予想」が出されるときは、事前の予想に比べ良かろうが悪かろうがグラフは必ず動くから、「コンピューターの一瞬取引」の餌食となる。熱狂は、発表後10数分で終わるそうだ。穀物畑に群がるイナゴの大群のごとく、一瞬にして食い尽くし、去っていく。

ここで、私たちははたと気づく。世界が注目するアメリカ大統領選やイギリスの国民投票は、マネーのプロや、彼らが絶妙にセッティングしたコンピューターにとって、素晴らしい儲けの機会なのではないか。この瞬間を、待ち構えていたに違いない。大儲けした投資家や金融機関があったに違いない。

事実、トランプが次期大統領に決まった9日、日本の日経平均株価は一時、前日終値から1000円以上下落した。アメリカでもダウ工業株30種平均の先物が急落し、一時前日の終値より900ドル下落を記録した。日経平均の下げ幅が1000円以上を記録するのは、イギリスがEU離脱を決めた6月24日以来のことである。

大事なことをひとつ付け加えておく。こういった「事前にわかっている儲けのチャンス」において、プロ中のプロたちが一番儲ける状況とは何か。大方の予想が外れたときだ。
トランプ氏が家族と暮らす「最上階の3フロアーの自宅」があるとされるトランプタワーは、ウォール街からもそう遠くない、ニューヨーク市街の真ん中にある。