まずは、保険証を見て自分が加入している健康保険を確認しよう。そして、入社時に配られる福利厚生ハンドブックや会社のイントラネットなどで、どのような保障があるのか確認してみよう。なかには、差額ベッド料がかかった場合に、1日5000円などを補助してくれる会社もあるようだ。

付加給付があれば、それだけ民間の保険に頼らなくてすむので、その分のお金を生活費などその他の費用に回して有効活用したい。

民間の医療保険に加入する理由のひとつとして、「差額ベッド料に備えて」と答える人は多い。たしかに、差額ベッド料は選定療養のひとつで、高額療養費の対象にはならないので、費用は全額自己負担になる。ただし、差額ベッド料がかかるのは、患者本人が希望したときだけだ。入院したら、必ず差額ベッド料がかかるわけではない。

差額ベッド料を請求してはいけない3つのケース
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差額ベッド料を請求してはいけない3つのケース

厚生労働省は、差額ベッド料を徴収してはいけないケースとして、次の3つを挙げている。(1)同意書による同意の確認を行っていない場合。同意書に室料の記載、患者側の署名がないなど内容が不十分な場合を含む。(2)患者本人の「治療上の必要」により、特別療養環境室に入院させる場合。たとえば、感染症の恐れのある患者、集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者など。(3)病棟管理の必要性などから特別療養環境室に入院させた場合。たとえばMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などに感染していて、ほかの患者への院内感染を防ぐために、本人の選択ではなく主治医など病院側の判断で入院させたと認められる患者。

こうした通知が出ているにもかかわらず、「入院時のさまざまな書類に紛れて、差額ベッド料の同意書だと気づかないままサインをしていた」

「感染症の治療のために個室を利用したのに、差額ベッド料をとられた」「狭い地域なので波風を立てたくなくて、同意書に仕方なくサインした」など、差額ベッド料をめぐるトラブルはあとを絶たない。原因は病院側の説明不足によるものが大きいが、トラブルの背景に、病院の厳しい経営事情があるのも無視できない。