被害者は、自分が自己負担した医療費の一部負担金(3割など)についての損害賠償請求を別途行うことになる。

AFLO=写真

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このように第三者行為による傷病届を行うと、保険者にも損害賠償請求権が発生する。事故の当事者だけで示談をしてしまうと、正確な損害賠償請求ができなくなるので、示談をする前には必ず保険者に連絡しよう。

第三者行為による傷病届は、手続きに手間がかかるため、病院で「交通事故は健康保険を使えない」と言われることもあるようだ。また、健康保険を使わない自由診療は公定価格ではないため、言い値を請求したい病院の事情も見え隠れする。

しかし、交通事故では複雑骨折などで意外に治療が長引くこともある。いずれは加害者に請求できるとはいえ、示談が成立するまでの間、かかった医療費の全額を立て替えるのは大変だ。示談が成立しても、支払われるのは過失割合に応じた損失額になるため、全額戻ってくるわけではない。

第三者行為による傷病届を出せば、交通事故でも健康保険は使える。加入者の当然の権利でもあるので、万一のときには思い出してほしい。

病気やケガをしてみないと、なかなか健康保険の保障内容を考えることはないだろう。しかし、健康保険にはいざというときの医療や生活を支えるさまざまな保障が備わっている。せっかく保険料を納めているのだから、その恩恵をとことん活用しよう。

(早川幸子=構成 AFLO=写真)