遊び半分のスタッフをビシッと働かせる法

以前、連載で「孫子の兵法」を取り上げたところ、意外にも反響が大きく、一冊まるごと私なりの「孫子の兵法」を書き下ろすことに相成った。

『孫子の兵法』飯島勲著 プレジデント社

正直に告白すれば、私は「孫子の兵法」について何もわかっていない。プレジデント編集部にそそのかされたこともあるが、永田町で培ってきた無手勝流の兵法をもとに、「孫子の兵法」に独自の解釈を加えつつ、読者の皆さんに(副題にもなった)「ヒト・モノ・カネを自在に操る」方法を伝授できたらと考えた次第である。

今年7月には参院選がある。衆院を解散してダブル選挙になるのかどうかと世間も騒がしい。

選挙は現代社会における“戦争”といってよいと思う。「孫子の兵法」が現代にも通用することを実感できる絶好の機会である。書き下ろしを契機に、私がかかわった選挙戦略をいくつか思い出した。

私が秘書として仕えた小泉純一郎元首相も、後年は磐石の選挙体制を敷いていたが、当選回数が少なかったときは選挙が強いとはいえず、毎回厳しい戦いだった。

さすがに選挙で殺し合いとまではいかないが、候補者やそれを支える秘書は落選すると自分たちの職が失われてしまうのだから命がけで戦わなければならない。選挙スタッフはいつも殺気立っていた。

この選挙活動という戦いを支えるのが多くのボランティアだ。ボランティアたちは、頑張ってくれる人もいれば、遊び半分で自分の恋愛パートナーを探すためにきているような不届きな輩も当然いる。彼らをどうやって戦力に変えるか。彼らはボランティアであると同時に、地元の大切な有権者でもある。他の選挙事務所の例だと、彼らに頭が上がらず、ゆるい対応をした結果、選挙活動が機能不全に陥ってしまうようなことがよく起きている。私にとっては、軍師としての腕の見せどころだった。

当然のことだが、甘いだけではナメられる。人を動かすためには、ビシッと叱る必要がある。私はこの嫌われ役を買って出ることで選挙事務所全体を戦う集団に進化させようと考えてきた。