選挙事務所の空気がどうしてもピリッとしない場合のとっておきの裏技がある。今回、この『孫子の兵法』と同時に発売される『権力の秘密』(小学館文庫プレジデントセレクト・飯島勲著)から引用してみよう。

完全な信頼関係もあり、気心が知れた人間がメガネをかけているなら、次のようにしてみてもいい。
その人のメガネのレンズのフレームと耳にかけるフレームの継ぎ目の部分を、手で思いっきり横から払うのです。多少の練習が必要ですが、うまくできれば、きれいに相手のメガネが飛ぶはず。メガネは傷むかもしれませんが、相手は全く痛くない。
パーンとイヤな音がして、事務所の真ん中にメガネが転がる。その場に居合わせた人は全員凍りつくでしょう。そこで、この仕事がいかにに大切なものかを優しく諭すのです。
恐るべし! 飯島勲の孫子の兵法 飯島勲著『ヒト・モノ・カネを自在に操る「孫子の兵法」』。「大権力強奪のメカニズム」が、「孫子の兵法」を例にわかりやすく解き明かされているのだ。本書を読んでライバルを出し抜こう。(C)光プロダクション/小学館

実は孫子自身も、人の指示を聞かずまじめに動かない人間の集団をどうやって規律正しく動かすかという難題に挑戦したことがあったという。

司馬遷の『史記』などで紹介されている有名なエピソードで、呉王が孫子の軍師としての実力を試そうと後宮の美女180人の軍事調練を命じてどうなったかというストーリーだ。はじめは孫子がいくら指示を出しても、美女たちは従わない。孫子は諦めずに、5度繰り返したが、やはり、美女たちはいうことを聞かない。そこで、孫子は「兵が従わないのはリーダーの責任である」として、隊長役をつとめていた呉王の寵姫2人を殺してしまう。すると、あれだけ命令を聞かなかった美女たちが、必死で調練に取り組むようになったという。これをきっかけに呉王は孫子の力を認め、軍師として迎えたという。

世に兵法家として伝わる孫子は、兵法とは机の上のものではなく、実戦で応用できてはじめて意味のあるものだと考えたのだ。どうやったら戦争に勝てるか。時には非情になることも必要だ。また、戦闘以外の方法で敵を圧倒する方法を探る場合もあるだろう。あらゆる戦略を考えに考え抜いた者だけが、勝利を得ることができる。