2016年3月25日(金)

ホンハイ買収受け入れで見えた、シャープの「甘い認識」

大前研一の日本のカラクリ

PRESIDENT 2016年4月4日号

小川 剛=構成 AFLO=写真
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駆け込み寺と化す産業革新機構

シャープの再建支援をめぐって、政府系ファンドの産業革新機構とテリー・ゴウ(郭台銘)会長率いるチャイワン企業、ホンハイ(鴻海精密工業)の綱引きがどうやら終結したらしい。もともとシャープ買収に熱心だったのはホンハイで、積み増しで最終的には7000億円規模の支援策を提示した。一方、シャープの技術流出を懸念する政府の意向を受けて救済に名乗りを上げたのが産業革新機構で、こちらの出資額は3000億円。政府保証付きの産業革新機構の提案に一時は傾いていたが、1月末にテリー・ゴウがシャープ本社に直接乗り込んで現経営陣の続投や雇用維持を訴えたことで流れが一変、取締役会は支援条件で上回るホンハイに決定した。

シャープ本社を訪れた台湾の鴻海精密工業の郭台銘会長(2月5日)。(写真=AFLO)

産業革新機構とホンハイ、シャープは再生のパートナーにどちらを選ぶべきなのか――。少なくとも産業革新機構ではなかったと私は考える。

産業革新機構は2009年に設立された官民共同出資の投資ファンド。ベンチャー企業や大企業の事業再編に絡んで革新的な技術を育てることが本来の設立目的だが、近年は破たんした企業の駆け込み寺的な存在と化していた。要は安倍政権の下でバタバタと会社が潰れても困るし、右派政権だから外資に乗っ取られても困る、ということなのだろう。

産業革新機構の最大の問題は、金融機関ほかいろいろなところから人材をかき集めてはいても、シャープに乗り込んで再生できる経営のプロを今は抱えていないことだ。つまり出資先のトップはどこからか探してきて送り込む。しかし、現場のことがわかっていないトップがマイクロマネジメントしようものなら、待っているのは悲劇である。機構にしか目線が向いていない腰掛けトップの下で、全社一丸の再生などなしえない。

シャープに対する産業革新機構の提案を見ても、事業が何によって成り立っているのか、全然わかっていない。

たとえばシャープの白物家電とやはりトラブっている東芝の白物家電を事業統合する、という。同じ家電といっても、それぞれに歴史は異なるし、強みも違う。しかも白物家電の歴史でいえば韓国のLGや中国のハイアールといったまったく異質の競争相手が世界市場では登場してきて、日本のメーカーは歯が立たなくなっている。競争に敗れたら潰れるのが自由主義社会の大原則である。潰れる恐怖を取り除いて、負け組と負け組をくっつけてもうまくいくわけがない。事業においてはマイナスとマイナスを足してもマイナスにしかならないのだ。

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