「エースの穴」は大きかった

サッカーの女子日本代表『なでしこジャパン』が、リオデジャネイロ五輪アジア最終予選で上位2チームに入れず、4大会連続の五輪出場を逃した。なでしこが五輪出場を逃すのは、2000年シドニー大会以来、16年ぶり。なぜ国際サッカー連盟(FIFA)ランキング4位のなでしこが敗退したのか。

たしかに10日間で5試合という強行日程だった。だが、他国も条件は同じ。日本にとっては、コンディション調整に有利なホーム開催だった。なんといっても、初戦の豪州戦を1-3で落としたことが痛かった。これで選手に焦りが生じたのか、韓国戦(1-1)、中国戦(1-2)では“らしくない”ミスを続発し、リズムに乗れなかった。

なぜなのか。たしかに引退したエース澤穂希さんの穴、中盤のつなぎ役の宇津木瑠美のけがによる不在は痛かった。強化試合を含め、チームの準備に問題もあっただろう。

だが、澤さんから背番号10を引き継いだ大儀見優季は中国戦の後、こうコメントした。「現状維持は退化と同じ。それでは周りに追い越される」(3月5日付・スポーツニッポン新聞)と。同感である。勝負の世界にあって、現状維持は相対的には後退である。

22歳の横山久美が気を吐いたが、主力はほとんど経験豊富な選手たちだった。今大会メンバー20人のうち、2011年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会の優勝メンバーが31歳のMF宮間あや主将、32歳のGK福元美穂、31歳のDF近賀ゆかり、32歳のFW大野忍ら14人。12年ロンドン五輪の銀メダルメンバーも13人。昨年のW杯カナダ大会の準優勝メンバーは16人、いた。

これを、2007年末に就任した57歳の佐々木則夫監督が指揮した。どうしても、戦術や指導は“マンネリ化”し、チーム内の緊張感は薄くなっていく。当然、相手チームはなでしこの選手と戦術をとことん研究してくる。ボールの出どころの宮間主将と大儀見は徹底マークされた。経験値の高さは時に裏目にでる時もある。簡単にいえば、国際舞台で勝ち続けてきたからこそ、世代交代がうまくいかなったということだろう。