2016年3月18日(金)

野球賭博事件で見えたプロ野球界の「モラルの低さ」と「危機感の希薄さ」

スポーツ・インテリジェンス【第53回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
松瀬 学 まつせ・まなぶ
ノンフィクションライター

1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書は『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)など多数。

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松瀬 学=文
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このままでは「五輪競技入り」に悪影響も

ここまでひどいとは。開幕を控えたプロ野球界が『野球賭博事件』の再熱で揺れている。またも巨人で新たな野球賭博違反者が明らかになり、昨秋発覚した3選手に次ぎ、これで4人となった。巨人ほか複数球団で、選手間の金銭のやりとり常態化まで発覚した。一連の事件で分かるのは、プロ野球界の「モラルの低さ」と「危機感の希薄さ」である。

大きく言えば、プロ野球、いや「スポーツの価値の危機」とみていい。しっかりしないと、今夏に審議される野球・ソフトボール競技の2020年東京五輪の追加種目入りに悪影響までおよぼすことにもなるだろう。

もはやプロ野球への信頼は大きく失墜した。巨人は、かつて公式戦に勝つと試合前の円陣で音頭をとった選手が、他の選手から集めたおカネをもらえる、通称「声出し」というゲームに興じていたことを明らかにした。士気を高揚するための「ゲン担ぎ」としているが、これって賭け事の範疇に入るのではないか。

調査の結果、阪神や西武などでも似たような金銭のやりとりが行われていたことが分かった。全球団の調査が進めば、さらに他の球団からも金銭の授受が出てくるかもしれない。

巨人は、この金銭授受は「敗退行為とは正反対」と説明している。日本野球機構(NPB)の調査委員会でも「野球協約に違反する行為(敗退行為)ではない」と結論付け、報告書には記載されてはいなかった。誤った判断である。

「この際、うみは全部、出さなければならない」。そう多くの人は口にする。ならば、球団やNPBだけによる調査では限界がある。野球賭博における胴元・暴力団の介在の可能性も否定できないのだから、もはや捜査機関の手に委ねるか、検察や警察と一緒になって調査しないと真相究明はできないのではないか。

野球賭博について、昨年の巨人球団の聞き取り調査では、高木京介投手から賭博に関与したという証言は得られていなかった。が、今年、週刊誌の『週刊文春』の取材を契機とし、球団が再調査を実施したところ、高木投手が関与を認めることになった。

事件の責任をとり、長年権力を誇示してきた渡辺恒雄最高顧問、白石興二郎オーナー、桃井恒和会長がそろって辞任した。不思議なのは、辞任した幹部は何も語らず、高木投手だけが会見で謝罪したことである。

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