【田原】それじゃ困りませんか。

【佐藤】将来は企業が国の役割を果たすと思います。一方、逆に国も企業に近づいていって、境界線があいまいになっていく。たとえばすでにアメリカはアップルやグーグルを応援して国のプレゼンスを上げているし、サムスンは韓国政府とべったりで、ほとんど一体化していますよね。そういう世界で、国の通貨か企業の通貨かということにたいした意味はないと思います。

【田原】おもしろい。ただ、僕にはまだ現実感がないなあ。

【佐藤】私は、将来は経済のシステムが競合する時代になると考えています。それに比べればどの通貨が選ばれるのかというのはまだ小さな話で。

【田原】えっ、どういうこと?

図を拡大
メタップス 佐藤航陽社長の経歴

【佐藤】人類は時代とともに選択肢を増やしてきました。たとえば昔は職業や結婚相手を自分で選べなかったけど、いまは自由に選べます。住む場所だって好きなところにいける。それと同じように、経済のシステムも選ぶ時代に入っていきます。これから新しい経済のモデルがたくさんできて、従来の資本主義の仕組みの中で生きる人もいれば、まったく違う経済システムの中で生きる人もいる。この100年は、その比較検討の時代じゃないでしょうか。

【田原】日本はどうですか?

【佐藤】いまのところ世界の流れから置き去りにされています。やはり言葉の壁は大きくて、発想がどうしても閉鎖的になる。インターネット上のコミュニケーションが写真やスタンプ、「いいね!」ボタンのように言語以外のものに移りつつあるので、いずれ開国するかもしれませんが当面は変わらない。日本は経済がそこそこ回っているので、みんな変える必要性を感じていないのでしょう。

【田原】佐藤さんはメタップスでそれを変えようとしているんでしょう?

【佐藤】じつは少し迷いがあります。必要性がないのに無理に変化させるのも違う気がして。100年、200年、あるいは1000年という時間を考えたときに、どういう形の社会が理想なのか、自分なりに探しているというのが正直なところです。

【田原】お話をうかがっていると、テクロノジーが生み出す未来を肯定的にとらえているように見えるけど。

【佐藤】テクノロジーは一定の流れで進化して社会を変えていきます。具体的にいえば、いま手作業でやっているものはすべて機械化されて、生きるためのインフラはタダで提供されるようになります。その結果、人は労働とお金から解放されて自由になる。好むと好まざるとにかかわらず、その方向性は中長期でほぼ決まっている気がします。