コヴィー博士の遺作となった『第3の案』は、人生におけるすべての問題を解決し、私たちに幸運をもたらす思考法について説いた本だ。フランクリン・コヴィー・ジャパン副社長の竹村富士徳氏が、その全貌を解説する。

能動的な人にのみ幸運が訪れる

ここで、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ博士が提唱した「計画された偶発性理論」を紹介しましょう。これは、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」とするもの。つまり、大半のビジネスパーソンのキャリアは、偶然の出来事によってつくられており、計画通りになった人などほとんどいないということです。水面がなだらかだった過去の時代は、企業誘導型で予測した通りのキャリアを積むことができました。しかし、現在は企業が市場に合わせていく時代です。偶然起きるさまざまなことに対して、状況に応じて主体的な選択をしていかなければなりません。

といっても、これは「キャリアは偶然に任せておけばいい」という意味ではありません。「キャリアは偶然の積み重ねで、予期せぬ出来事で成り立っている。しかしながら、日頃から能動的な行動パターンをとっている人には、自分にとってより好ましいことが起こる」としているのがこの理論の素晴らしいところです。よい運は、刺激に対して何も考えず、努力もせず、即座に反応するだけの人には訪れません。主体的になって、自分が影響を与えられる範囲でできることを一生懸命やっている人に訪れるものであり、主体的な人には「好ましい偶然=幸運」が起きるのです。

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望ましい偶然に幸運が起きる人の5つの行動特性

クランボルツ博士はキャリアパスそのものを否定しているわけではなく、目指す方向に向かって主体的に歩もうとするのであれば、より好ましい偶然というものが起きると説いています。さらに博士は、その計画された偶発性は、「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心」という5つの行動特性を持っている人に起こりやすいとしています。これらの考えは、コヴィー博士の思考とも通じるものがあります。