コヴィー博士の遺作となった『第3の案』は、人生におけるすべての問題を解決し、私たちに幸運をもたらす思考法について説いた本だ。フランクリン・コヴィー・ジャパン副社長の竹村富士徳氏が、その全貌を解説する。

二者択一も妥協も「第3の案」には遠い

スティーブン・R・コヴィー博士は著書『第3の案』で、二者の意見が対立したとき、私たちが最終的に求めなければならないのは、Aの案でもBの案でもない。意見が違う双方のニーズ(利害)を兼ね備えた「第3の案」であると説いています。これは、簡単な数式にすると「1+1=3以上」と表すことができます。私たちはとかく二者択一の選択か、2つの案を合わせた妥協案かと考えがちですが、創造的な「第3の案」を生み出すことこそが、私たちがしなければならない選択なのです。

「第3の案」を生み出すには条件があります。たとえば、AさんとBさんが協力して「第3の案」を生み出す場合、お互いが自立していて、意見やアイデア、考え方、パラダイム(視点)……とあらゆる点で違っている必要があります。違っていていいのです。しかし、会議などで自分の意見と違う意見を出されたとき、私たちは通常それを歓迎しません。どちらかが折れることで、形のうえで同じ案になったとします。これでは「1+1=1」にしかなりません。また、単に意見が違うだけでお互いに何もしなければ、異なる2案は衝突して「1+1=0」、よくても1以下になってしまうでしょう。「1+1」を2ではなく、3以上にしていくには、それ相応の原則とプロセス、個人の人格的な強さが必要です。

自分のA案と相手のB案があるとします。違う案なので、最初は離れています。もし同じ目的を持って協力して「第3の案」をつくっていくのであれば、まずは歩み寄る必要があります。歩み寄ったところで、異なるA案とB案が完全に重なり合うことはありませんが、重なり合う部分が生まれます。これが一般的にいわれる妥協案、折衷案です。「1+1=1以下」という状態です。しかし、「第3の案」は、双方の歩み寄りだけでは生まれません。異なるA案のニーズとB案のニーズを包括したうえで、お互いがまったく考えてもみなかった案=「第3の案」を生み出すことなのです。(図を参照)

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「1+1=3以上」のシナジー(相乗効果)を生み出す「第3の案」とは

「第3の案」は異なる「個」の強みを生かした案なので、シナジー(相乗効果)が生まれ、「1+1=3以上」となります。そのため、個の違いが大きいほど、「第3の案」が生まれたときのシナジーは大きくなります。この「第3の案」を常に求め、そのことを習慣付けている人のことを、コヴィー博士は「シナジスト」と呼んでいます。大切なのは、これを習慣にするということです。