「支援」の意味を深く考えさせられる

写真集と聞いて、何を思い浮かべるだろう。たとえば、アイドルの水着姿が写っているものだったり、トップ女優の初ヌードだったり。雄大な自然を撮り続けたものもあれば、世界遺産を紹介するようなものもあるだろう。とはいえ、普段ぼくたちは写真集を手にする頻度は書籍より少ないと思う。

そんななか、あえてこの一冊を紹介したい。“主人公”は森本喜久男氏、67歳。友禅職人だった森本氏は、ポルポト政権時代の内戦で絶滅の危機に瀕したカンボジアの絹織物と出会った。疲弊したこの国の人々、荒れ果てた木々、失われかけた伝統技術……。その伝統技術の復興に携わるため、京都の工房を畳み、現地で30年にもわたる活動を続けている。

『いのちの樹 The Tree of Life IKTT 森本喜久男 カンボジア伝統織物の世界』内藤順司著 主婦の友社

森林の再生を手掛けるのは、生糸の生産ばかりでなく、染色素材の確保にも必要なこと。それとともに、住民たちの輪を広げ、技術の伝承を行う。地元住民たちの工房作りは、伝統を守るだけでなく、対価を得る手段にも繋がっていく。夫を失った妻、笑顔を忘れた子どもたちが、徐々に自分たちで働くことを覚え、地域で穏やかな暮らしを再生し、笑顔を取り戻していく。ここに、本当の「支援」の意味を深く考えさせられると、写真を撮り続けた内藤順司氏は語る。

内藤氏は、長く浜田省吾、スピッツをはじめ、数多くのロッカーたちを撮り続けてきたカメラマンだ。ステージ上で躍動し、熱を発し続けるロック・スピリッツをフレームの中に収め続けてきた。その内藤氏にとって大きな転機は1999年7月の全日空61便ハイジャック事件。乗客の一人だった内藤氏は自らの死を覚悟した。寸前のところで墜落を免れたが、犯人に刺された機長は死亡した。その後、2001年の9.11、ニューヨーク同時多発テロ事件では、東西冷戦崩壊後の世界がカオスの時代に突入していくことを改めて実感した。