2015年12月20日(日)

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和夫少年は内弁慶で甘えん坊だった

いつの時代でも、母親という存在は、息子にとって特別なものらしい。まして、亡くなってから20数年たち、自分の年齢がその享年を超えるまでになると、その思い出は心のなかで年を追うごとに昇華されていくのだろう。京セラ、KDDIを立ち上げ、日本航空の再建に携わった稲盛和夫氏が、数多い著作のなかで初めて本格的に母を語ったのが、この本である。

『ごてやん』稲盛和夫著 小学館

タイトルの「ごてやん」というのは、鹿児島の言葉で「ごてる」、つまり、わがままを通して相手を困らせる子どものことだ。稲盛氏は、家業の印刷業が繁盛していて比較的裕福な一家の4男3女の次男として生まれている。幼少のころは極端な内弁慶で、甘えん坊のまま育てられた。母キミさんの着物の裾をつかんでついて回る。仕事が忙しい母の姿が見えなくなると泣き出し、しばらく止まらない。いまの稲盛氏のおだやかな風貌からは想像しにくい。

そんな和夫少年に、両親はそれぞれの愛情で接した。稲盛氏は「二人とも小学校しか出ていないが、すばらしい人間性を持っていた」と書いている。父親は無口で慎重派、母親は芯が強く大胆。「私自身は、そのどちらの性分も受け継いでいる」という。稲盛氏の足跡を見ると、それが納得できる。中学受験に失敗したり、結核に罹るなど、苦しい経験をすることになるが、両親からもらった"士魂商才"で起業家として大成していく。

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