女性は「産め、働け、育てろ、介護しろ」というのか?

安倍政権は「1億総活躍社会」実現の緊急対策をまとめた。

1億総活躍社会の狙いは、日本の構造的な課題である少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持し、強い経済を実現することにある。

それを達成するためにアベノミクス第二ステージと位置づけた新・3本の矢を打ち出した。

3本の矢の的となるのが、2020年を目途に、

・名目国内総生産(GDP)600兆円
・希望出生率1.8
・介護離職ゼロ

――の3つだ。

だが、2014年度は次のような結果だ。

・名目GDP491兆円
・合計特殊出生率1.42
・年間の介護離職者数は約10万人

20年あまり続く低成長と加速する少子高齢化の流れを跳ね返そうとする大胆な目標であるが、メディアや有識者からは早くも実現は不可能との指摘が相次いでいる。

たとえば、希望出生率1.8の実現。この1.8の根拠は、

(1)独身女性の約9割が結婚したいという調査
(2)夫婦の希望子ども数2人以上という調査

を前提に弾き出した数字だ。

1.8を最後に超えたのは、1984年。1985年の30~34歳の女性の未婚率は10.4%。2010年の34.5%より低い。専業主婦世帯は952万世帯から720万世帯に減少し、今では共働き世帯が1077万世帯と逆転している。現在とは環境も大きく異なる。「妊娠・出産の条件」が悪くなっているのに、政府はいい数字を出そうというのだ。

しかも、政府は専業主婦世帯を増やすつもりはない。

働く人の数と生産性の合計で決まるGDPを600兆円にするには女性の労働参加は不可欠だからだ。そのため、「仕事と結婚・出産、子育てが二者択一の構造から同時実現の構造への転換を図る」と豪語している。

要するに、女性に対して「産め、働け、育てろ、介護しろ」を同時実現せよと命令していると受け取られてもおかしくない上から目線なのである。