なぜ、親と同居する女性ほど離職率が高いか?

実現可能性という点では「介護離職ゼロ」が不可能どころか、政府が掲げる「女性活躍推進」や「2020年に女性管理職を30%にする」目標すら崩壊させる大変な事態が待ち受けている。

上場企業15社の社員を対象にしたダイヤ高齢社会研究財団の調査(2013年)では、「現在介護が必要な人数」が1人以上いる割合が最も高いのが「56~60歳」で23.5%。「51~55歳」で21.3%。いずれも4人に1人、5人に1人の割合だ。

さらに、今後介護が必要になる可能性があるのは「51~55歳」で51.4%、「46~50歳」で42.6%とほぼ2人に1人の割合だ。また、「51~55歳」では2人以上の複数の要介護者を抱える可能性がある人は28.6%も存在する。

そして実際に男性の7.1%、女性の26.3%が介護で離職する可能性があると回答している。つまり、女性の4人に1人以上が会社を辞めて親の介護をしようと考えているのだ。見逃してならないのは、彼女たちは非正規社員ではなく、大企業の正社員であることである。

今の40~50代の世帯はまだ専業主婦世帯も多く、パートを辞めて自分や夫の親の介護に専念できる状況にある。だが、団塊ジュニア世代の30代はフルタイマーの夫婦も多い。

両方とも1人っ子であれば「最大4人の親の介護」に直面することになる。女性の離職者が4人に1人ではすまなくなる自体も想定される。

さらに、先の調査では極めて興味深い結果も出ている。

親との同居、近居、遠居別に離職の可能性を調べたところ、同居が26.6%と最も高いのだ。これは何を意味しているのか。

調査を担当した山梨大学の西久保浩二教授は語る。

「子どもの育児と仕事の両立では親との同居は就業を継続するためのリソースになる。ところが同居している親が要介護者になると会社を辞めざるを得ないと考える人が増える、という皮肉な結果になっている。実際に親に子育てを応援してもらったから、最後ぐらいは一緒にいてあげたいという女性の回答も多かった」

親と同居している人は親が子どもの面倒を見てくれるので仕事と育児の両立がやりやすいが、今度は親が介護に直面すれば両立ができなくなってしまう。