ビジネス書を読む。勉強会に参加する。そこで「目からウロコがおちる」知見に出合えれば、貴重な時間を使った甲斐があるというものだ。

しかし本書の著者は言う。それじゃ、ダメなんだ。

教える職業の私からすると、自分の授業を熱心に頷きながら聴いてくれる学生が好き。拙著を最初から最後まで丁寧に読み込んでくれた人に出会うと、何とも嬉しい気持ちになる。しかし著者は言う。ビジネス書なんてつまみ食いでいいのだ。

さて、そのココロは?

本書のキーワードは「教わる力」だが、そこに受動的なニュアンスは全くない。情報過多の現代社会、オーバーロードに陥らないように、本当に自分に必要なものを効率的に消化吸収するにはどうしたらよいか。学びの指針を与えてくれる良書だ。

「教わる力」とは、自分の判断軸を作ることであり、取捨選択をできるようになることである。それがなければ、いろいろな情報に触れても単なる視点のサンプルが増えるだけ。確固たる判断軸があってはじめてほかの視点との距離が比較でき、クリティカルなポイントが明確化する。

なるほど。たしかに、上司の教えや一冊の本が丸ごと自分にフィットして役立つことなどなかなかありそうもない。判断軸があれば、本なら目次をよく見て、役立ちそうなところだけピックアップすればいいのだ。

では、その判断軸を作るにはどうしたらいいか。最初は他人の判断軸を借りて利用すればよい。選ぶべき「他人」として、ビジネス界のキュレーターともいうべき人たちが具体的に紹介されている。

そして、できあがった判断軸を鍛え、完成させる。そのためには自分の道を見つけ出し、貫き通す。このあたり生半可な覚悟ではダメなようだ。たとえば「この人のようになりたい」と決めたら徹底的に真似する。模写し、コピーし、憑依する。信じる道で模倣することで、やがてオリジナルが生まれる。自分の講演スタイルはこれに近いので、肯定され嬉しくなった。

著者は現在はアカデミズムの世界にいるが、元は複数の外資系企業で豊富な実績を積んできた。各章の冒頭では「今、全体の中でこのあたりをやっていますよ」という解説が入る。このナビゲーションが丁寧で、読みやすさにつながっている。「自分にとって必要なところを取捨選択せよ」という自らの主張への誠実な対応とも言えるし、外資系コンサルタントの流儀でもあるのだろう。

ビジネス、お受験、そしてなぜかゴルフの話題がバランスよく配された構成も巧みだ。ただ自分はゴルフを全くやらないので、ここだけはどうもしっくりこなかったが……。あ、失礼。そこは捨ててよかったんだよね。