考えてみてください。家具屋さんでもどこでもいい、店内に入ったら店員が飛んできて、ずっと付いて歩くとしたら鬱陶しくないですか。お客としてはそう思うのが自然でしょう。これは世界中どこでも同じです。

アメリカはそうだが日本は違う。北海道はそうだが関西は違う。文化が違うから接客の仕方も違うんだという人がいますが、ほんとうにそうでしょうか。みんな人間なんだから感じ方もベースの部分では同じだと考えるほうが自然です。

もちろん高価な品であるとか説明が必要な商品はありますが、大部分は接客するよりも店頭の値札や説明書きに語らせるほうが、お客様に買い物を楽しんでもらえるのです。

基本はセルフサービス。そして、どうしても説明を聞きたいという場合にだけ、お客様が店員に声をかけるという形が理想なのです。

そもそも「接客が上手いから売れる」というのでは本末転倒です。小売業では挨拶、親切、整理整頓などを本社がうるさく指導することがよくありますが、逆にいうと、店員の挨拶がよくないと売れないのでしょうか。

私はそうは思いません。もし店員の態度がよくなかったとしても、商品の品質がよくて十分に安ければ9割の人が買うでしょう。なぜならお客様は商品を買いに来るのです。店員の礼儀礼節や説明を買いに来るのではありません。

もちろん接客態度が優れているのは好ましいことですが、それはあくまでもプラス・アルファの部分だということを忘れてはいけないと思います。

また、日本流の接客を見ていておかしいなと思うのは、偏見や神話に基づく間違った知識を押し付けているということです。たとえば「ソファは少し硬めのほうがいいですよ」とよくいわれますが、医学的根拠はありません。話している当人は騙しているつもりはないでしょうが、結果として買う側の立場を考えない接客になっているのです。

逃げ場として「感性」「多様性」という言葉を使うこともあります。私はそれを社内では一切許しません。数字の裏づけがある具体的な話をしなければいけない、ということを徹底しています。それは接客においても同じです。

ニトリの強みは「低価格と高品質の両立」。しかし一部のホームセンター大手がPB戦略を拡大するなど低価格・高品質路線にはライバルも登場している。そのなかで差別化するには、もう一つ大事な要素が必要だと似鳥社長は指摘する。

一言でいえば「品揃え」ということになります。ニトリではお客様が同じイメージでコーディネートできるように家具やホームファッションの商品を企画・開発しています。こういった統一感のある品揃えは、まだまだ他社には真似できないところだと思います。

こうした品揃えを実現するための商品企画は、社長の私と社員たちとで議論しながら練り上げます。基本的には担当部署の社員たちがアイデアを出し合い、討論し合いながら次々と企画づくりを進めます。そのなかで私は、全体のプロデューサー役として大きな方向性を打ち出すほか、討論の場へも積極的に参加するようにしています。