そこで今回は、この和算に挑戦してみよう。数ある和算書のなかでも、『算法童子問』(村井中漸著)から「大原の花売り」を紹介したい。書名の通り子ども向けの本だが、案外と難しいので侮れない。
「京都大原の里から、毎日花を売りに来る女がいる。女の家には『桜・桃・椿・柳』の4種類の花があり、そのうち3種類を毎日均等になるように選び、売り歩く。選ぶ順番も同じだという。ある日、『桜・桃・椿』を買った。次に同じ組み合わせの花を購入できるのは何日後になるだろうか?」
これは「組み合わせ」の問題である。4種類の花から3種類を選ぶ方法は何通りあるかを考えるのだが、「選び出す花」を考えると複雑になるので、逆に「家に置いてくる花」に着目する。「4種類のなかから3種類を選び出す」ことと、「どれか1種類を家に置いてくる」ことは同じ意味だからだ。
これを「余事象」といい、ある事象に対して、そうではない反対の事象を指す。この問題は余事象に注目することがポイントになる。要するに発想の転換だ。
図の通り、花は4種類なので、家に置いてくる花の選び方も4通りだ。したがって4種類のなかから3種類を選び出す方法も同じ4通り。つまり、花の組み合わせは4日で1回りするので、答えは「4日後」ということになる。
(構成=田之上 信)