亡くなる人は増えるが後継ぎは減る。社会の急速な変化にあわせて、介護、葬式、墓の常識は今、ここまで激変した!

【QUESTION】1代限りの「自然葬」になぜ人気が集中するか?

墓石の代わりに樹木を墓碑として遺骨を埋葬するのが「樹木葬」。岩手県一関市の祥雲寺が1999年に始めた樹木葬墓地が、日本で最初とされている。その樹木葬が、このところブームといえるほどの人気を博している。

横浜市の霊園で人気を集める樹木葬区域。

同じ自然葬の一種に、粉末化した遺骨を海上や山林に撒く「散骨」がある。散骨は90年代からぽつぽつと行われるようになったが、こちらは一般化しているとは言い難い。樹木葬との違いは、「手を合わせて拝む対象がない」(葬儀相談員 市川さん)ということだ。

また、墓地以外の区域に遺骨を埋めてはいけないとする「墓埋法(墓地、埋葬等に関する法律)」に照らせば、散骨という行為はグレーゾーンにある。一方、樹木葬の場合は、自然の山林に散骨するのではなく、法律上の許可を得た墓地に遺骨を埋葬する形である。

樹木葬のやり方はいくつかのパターンに分かれる。大別すると、(1)遺骨を埋葬するたびに1本の苗木を植えるスタイル、(2)墓地の中央に樹木を植え、その周辺に多くの遺骨を埋葬するスタイル、の2つである。(2)に関しては、樹下のプレートに名前を刻む「個が残る」形の埋葬のほか、散骨と同様に遺骨を粉末化したうえで、一人ひとりの名前は出さずに木の下の地面に埋める「個が残らない」形の埋葬がある。

場所もさまざまだ。地方のお寺などが、自寺で所有する山林を墓地として登録し、そこを樹木葬の場とするのが里山型。都市近郊の墓地で、敷地の一部または全部を樹木葬の区画にあてるのが都市型である。最近開発された墓地には、必ずと言っていいほど、樹木葬のための区域が設定されている。公営墓地も例外ではない。

2012年、東京都立小平霊園の樹林墓地が埋葬希望者を募ったところ、第1回募集の倍率が平均で16倍を上回った。人気が高いと言われる都立霊園だが、一般墓地の倍率は7~5倍ほど。それと比べても樹木葬の人気は破格である。また、小平霊園の一般の墓地は、1区画145万~484万円とかなり高額なのに対し、樹木葬では、遺骨を粉末化した場合で4万3000円、粉末化していない場合で13万1000円。この低価格も魅力である。

市川さんによると「散骨や樹木葬に関心が強いのは、主に後継ぎがいないシニア層。お墓を建てても自分の死後に管理してくれる人がいないので、1代限りでなくなってしまう埋葬のやり方に関心が向くのでは」という。

それだけではない。「夫や姑と同じ墓に入るのはイヤ」と言い切る女性は少なくない。「家」単位で葬られる伝統的な墓ではなく、樹木葬や散骨によって、安らぎを得たいという人は今後ますます増えるのではないか。

【ANSWER】熱望する奥様族の本音は「一緒のお墓に入りたくない!」

葬儀相談員 市川 愛
1973年、神奈川県出身。葬儀社紹介会社を経て2004年に独立。消費者視点からの相談・講演を行う。著書に『お葬式の雑学』など。