刑事事件として立件されるかどうかが焦点

インフラ事業に端を発する東芝の不正会計問題は、パソコン、テレビ、半導体などの主要事業でも利益の水増しが判明して、社長以下の組織的関与が明るみに出た。第三者委員会の調査報告書によれば、2008年4月から14年12月までの約7年間に行われた利益の過大計上の総額は1518億円。

不正会計処理の責任を取って辞任を表明する東芝の田中久雄社長(中)(7月21日)。(写真=AFLO)

「チャレンジ」と称して、経営トップが定例会議の席で各事業部門に目標達成や収益改善を過剰に求める利益至上主義の実態も報告された。

当初、財界におもねる新聞や経済紙は「不適切な会計処理」などと表記していたが、そんな生やさしいレベルではない。「飛ばし(自社の損失を他社に移すこと)」による不正会計が発覚したオリンパスの粉飾額1178億円を上回るのだ。

経営判断として行われたなら立派な「不正」であり、有価証券報告書に虚偽の記載を行ったのだから完全に「粉飾」である。少なくとも「善良なる管理者として負うべき注意義務」を怠ったのだから、取締役全員が民法の善管注意義務違反に当たる。

第三者委員会の報告を受けて、東芝は田中久雄社長、佐々木則夫副会長、西田厚聰相談役の歴代3社長と取締役9人の引責辞任、役員の報酬カットなどの社内処分を発表した。再発防止策やガバナンスを検討する経営刷新委員会を設置して議論を重ね、9月下旬の臨時株主総会で新体制を正式にスタートさせるという。

歴代社長の責任問題がさらに遡ることはなさそうだ。西田氏の2代前の社長である西室泰三相談役は今秋に上場を控える日本郵政の社長であり、安倍晋三首相とも非常に近い関係にある。強力な防波堤になるだろう。

しかし東芝再生の道のりは非常に厳しい。辞任した田中社長は記者会見で「東芝140年の歴史で最大のブランド毀損」と語っていたが、粉飾の全容解明が進めばブランド毀損どころか東芝という企業に対する信頼が地に墜ちて、企業解体の危機に追い込まれかねない。