海外が注目しているのは検察の動きで、刑事事件として立件されるかどうかが焦点だ。ライブドアの不正会計事件でホリエモンこと堀江貴文氏は懲役2年6カ月の実刑判決を受けたし、粉飾決算から破綻に追い込まれた米エンロンのCEOのジェフリー・スキリング氏は24年の禁固刑を言い渡された。同じく粉飾会計で破綻に追い込まれた米ワールドコムのバーニー・エバース氏も禁固刑に服している。東芝経営陣に対する追及が緩くなるようでは、当局の自浄能力、さらには日本の上場企業の信頼性が問われる。

原発大手の米ウェスチングハウスを買収するなど、東芝はアメリカでも巨大な事業体として活動しているわけで、今回の不正会計やそれに伴う内部統制の問題で米司法省やSEC(証券取引委員会)から追及される可能性は高い。すでにアメリカでは個人投資家が不正会計による株価下落に伴う損害賠償を求めて東芝を提訴、他の株主にも参加を呼び掛けて集団提訴に発展している。日本でも株主代表訴訟などが予想され、この先のプロセスは東芝にとって長く辛いものになりそうだ。

ちなみに第三者委員会の調査報告書には「本委員会の調査及び調査の結果は、東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われたものである」という唐突な一文がある。これは先々に待ち受けているアメリカの司法当局とのやり取りや訴訟の山を多分に意識したものと思われる。

アメリカの裁判には厳しいディスカバリー(情報開示)プロセスがあって、あらゆる企業情報を相手方に開示しなければならない。その意味では報告書の内容は不十分で、たとえば「経営トップの関与」に関して、東芝内部でどれほど醜い葛藤が生じていたのか、などが具体的には書かれていない。会計監査事務所(会計監査の最大手である新日本有限責任監査法人。オリンパスの粉飾事件も同法人)との関係についても踏み込んでいない。

非公開を条件にヒアリングした内容もあるはずで、それらの開示を迫られた場合に備えて、第三者委員会といいながらも独立公正な調査報告ではなく、あくまで東芝のためのものであることを明記したのだろう。