優秀人材確保に向け、会社知名度を25%→60%へ

三幸製菓で、採用をはじめ従業員1100人の人事業務全般を手がけているのが、システムマネジメント部次長の杉浦二郎氏だ。杉浦氏が人事担当となった06年は、総務部内で人事関連業務をこなすのはほぼ1人きり。採用に関しても「地元でいい人がいたら採用する」といったスタンスで、予算も微々たるもの。「パンフレットすら作れませんでした」。

一方その頃、三幸製菓は佐藤裕紀現社長が佐藤富一郎現会長から攻めの経営を引き継ぎ、売上高300億円を突破するなど急成長を遂げていた。今後、さらなる成長を続けるためには、地元からだけでなく、全国から多様な人材を受け入れるべきと考えていた杉浦氏は、経営陣に採用の重要性を粘り強く説き、自ら優秀な人材獲得に動くことで、信頼を獲得。09年から本格的な採用活動を始めた。

最初に杉浦氏が直面した課題は知名度の低さ。学生向けのアンケート調査では認知度25%と食品メーカーにしては低かった。そこで、まずは認知度を高めようと、イメージカラーを赤に統一。会社説明会では、三幸製菓の成長力とアグレッシブさを前面に出すプレゼンを心がけ、パンフレットを“巻物”にして配布し印象付ける工夫なども行った。10年には多額の予算をつけ、ちょうど始まったテレビCMも後押しし、3年間で認知度を60%まで上昇させたという。

知名度が高まり、多くの母集団を集められるようになったものの、杉浦氏は「大量に集めて大量に落とす」採用のやり方に疑問を感じるようになった。「大手ナビサイトに登録してもなかなか弊社を見つけてもらえませんし、採用規模は10~15人程度なのに、何万人も母集団を集めて落とすなんて、とても効率が悪い。極論ですが応募数=採用数となれば一番効率がいい」

ちょうどその頃、SNSが普及し始めるなど採用環境が変化してきていたこともあり、杉浦氏は、13年度採用から、思い切って就活ナビの利用をやめ、「ソーシャル採用」を打ち出した。社内から大反対に遭ったが、Facebookを通じて毎日情報提供し、「働くこと」をテーマにしたパネルディスカッションのイベントを行うなど、新しい試みは功を奏し、全国の優秀な大学卒の学生を採用することができた。しかし、「一つのチャネルからの採用では、やはりどうしても同質的な人が集まってしまいがち」だという課題が残った。