誰にも言えない潜在的な悩みを救った米国のベストセラー

つい先日、アメリカで幼少期を過ごした経験を持つある日本人起業家に取材した。彼が現地の小学校に通っていたとき、どんな話題でも概要を説明すると、教師は必ず「○○(名前)はどう思うの?」と各生徒に尋ねた。そのおかげで、自分の意見や気持ちを皆の前で表明することに何の躊躇もなくなった。

ところが数年後に日本に帰国し、小学校に入ると戸惑ってしまった。教師は、個人を指名するわけではなく「何か意見がある人は?」と全員に聞く。その言葉で自分が指名されているように感じ、毎回手を挙げて意見を述べていたら、教師が「○○君以外の人で」と言うようになり疎外感を味わったという。

あらゆる物事に対し自分の意見を表明するのが当然のアメリカ、意見を表明したい場合のみ、その機会が与えられる日本。初等教育からそうなのだから、かの国で雄弁で行動的、人々の先頭に立つ外向型人間が持てはやされるようになるのも当然だ。

ところが、そんなアメリカで、まるで対極の書籍が売れている。原題が“Quiet(静けさ)”、邦題は『内向型人間の時代』(講談社)。アメリカでミリオンセラーになり、日本でも2013年に発売。14年に入り続々と関連の書籍が出版され、テレビでも特集が組まれている。

著者はスーザン・ケイン。自身も、内向型人間であり、外向型を理想とするアメリカ社会での生きづらさを抱え、ウォール街で働く弁護士からライターに転身したという女性だ。