NGな声がけは「おまえ、もっと明るくしろよ」

もしあなたが内向型の部下を持った場合、どうするべきか。

「『おまえ、暗いな、もっと明るくしろよ』といったマイナス言葉を吐かないこと。口下手というのはその人固有の性格であり、個性です。性格や個性に良し悪しはありませんし、変えようとしても変えられません」

内向型の人間は、「明るく元気なほうがいい」という周囲の思い込みや期待などを常に感じているため、「どうして自分はそうできないのだろう」という自責の念にかられることに多くの時間を費やしているという。

しかし、変えることよりも内向型であることを受け入れていこうとすることで、自分なりの仕事への取り組み方を見つけていけるという。

「たとえば、そういう人は1対1の会話なら得意です。笑いをとったり、場を盛り上げるようなことはできなくても、落ち着いて商品を説明したり、相手の話をじっくり聴くことができる。それこそ立派な能力であり、生かさない手はないでしょう」

さらに、そうした部下の個性をきちんと見極め、欠点を補わせるよりは、得意なことを伸ばすように働きかけることを勧める。

「部下が4人いるとしたら、しゃべる人、記録する人、シナリオを作る人、全体を調整する人、というように、得意な仕事に特化させるべきです。小学校のように全員が発表できるようになる必要はないのです」

その部下は何が得意なのか、何をやりたいのか。それを知るには対話が欠かせない。ただし、内向型との対話にはコツがある。

「『どんなキャリアを目指しているの』といった未来の質問は即答するのが難しい。何も考えていないから答えられないのではなく、『こういったらどう思うだろうか?』などと内向型の人は必要以上に相手の反応を心配して、即座に答えられない傾向があるのです。そういうときは、『この前のプロジェクトは何が難しかった?』といったように過去に関する質問がいいでしょう。過去の事実なら明白なので、回答しやすいのです」

過去に仕事で悩んだところ、逆にうまくいったところなどを聞くことで、その答えから今後の課題や得意分野を類推して話を進め、その人の強みや個性を見極めるのがいい。

人事の世界でダイバーシティ(多様性)といえば手垢についた言葉になった。最近、それに代わる言葉として注目されているのがインクルージョン(一体化)だ。共通の目標に向かって、一人ひとりの社員が個性を発揮し、自分らしさを生かして仕事をしている状態をいう。

内向型が本来の強みを発揮できる組織こそインクルージョン型だ。あなたの職場はどうだろうか。

(文中敬称略)

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