2015年5月19日(火)

なぜネットは新しい価値観「共有(シェア)経済」を生むのか

サイバーリテラシー・プリンシプル(24)オンラインが新たなコミュニティを生む

PRESIDENT Online スペシャル

著者
矢野 直明 やの・なおあき
サイバーリテラシー研究所代表

朝日新聞社で1988年にパソコン使いこなしガイド誌『ASAHIパソコン』、95年にインターネット情報誌『DOORS』を創刊、初代編集長をつとめる。2002年にサイバーリテラシー研究所を開設し、「サイバーリテラシー」という考えのもとに、現代IT社会における人間の生き方を模索してきた。この間、慶応義塾大学、明治大学、情報セキュリティ大学院大学、サイバー大学などで教壇に立つ。主著:『マス・メディアの時代はどのように終わるか』(洋泉社)、『インターネット術語集』(岩波新書)、『インターネット術語集II』(同)、『サイバーリテラシー概論』(知泉書館)、『総メディア社会とジャーナリズム』(同、2009年度大川出版賞受賞)、『情報文化論ノート』(同)、『IT社会事件簿』(ディスカヴァー21)。

執筆記事一覧

サイバーリテラシー研究所(代表 矢野直明)=文
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マッチングこそインターネットの威力

インターネットは身近な人間関係を疎遠にし、コミュニティを希薄化するけれど、一方で地域を離れたコミュニティを作り上げる役割もする。インターネット黎明期から話題になることの多い「出会い系」サイトは、犯罪の温床になるなどマイナス面が強調されるが、出会いのチャンスを広げたこと自体は大いなるプラスである。

この「マッチング」こそインターネットの威力である。人びとは年齢、性別、職業、地域などを離れて出会うチャンスを得た。たとえごく限られた趣味を持つ人でも、インターネットで仲間を探すことができる。

私は、2月いっぱい、メキシコのカリブ海に臨むリゾート地、カンクンで過ごした。その3分の1は北部のちょっと高級なホテル、3分の1はダウンタウン(セントロ)の安宿、3分の1は南部の快適なコンドミニアムと、趣向を変えつつ、美しい島(イスラムヘーレス)に渡ったり、マヤ文明の遺跡(チチェンイツァやトゥルム)を訪ねたりした。これらの宿泊先はいずれも宿の「マッチングサイト(airbnb)」を通じて探したのである。

このサイトは自分の部屋の一部やマンション、あるいは会員権を持っている高級ホテルの一室などを提供したい人と、それを借りたい人を結びつけてくれる。ホストになるためにはある程度の審査があるし、ゲストになるためにも一定の資格が求められる(ともにアカウントを取得する)。貸したい人は部屋のロケーションや設備、価格などを写真入りで公開する。借りたい人はそれを検索して希望の物件があれば、その旨リクエストし、何度かのメールのやり取りのあとで、双方了解すれば契約が成立する。一度もあったことのない者同士だから、トラブルが発生する余地はあるけれど、そういう場合はサイト運営者が間に入って調整もしてくれる。

airbnbは、自分の宿泊施設の一部や今は使っていない物件を公開することで、提供者と利用者を結びつけるサイト「コミュニティ・マーケットプレイス」として2008年にアメリカの若者が開設した。現在では日本を含む190カ国3万4000以上の都市で部屋の貸し借りが行われている。ホストからマージンをとる方法で運営されており、130億ドルもの企業価値を持つという。

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