同一職務の非正規は時給で600円低い

じつはこの仕組みの実現を目指しているのが全国生協労働組合連合会(生協労連)だ。生協労連は08年に、大学の研究者に協力する形で生協の店舗の正社員と非正規について職務内容の分析・職務分類・職務評価を実施し、仕事の価値と賃金格差の実態を調査している。

首都圏の生協が協力した調査では、まず店舗の仕事を一つひとつ洗い出し、その職務ごとに知識・技能、職責の重さ、仕事でもたらされる負担など4つの指標で評価し、点数化した。

その結果、同一職務の評価点(職務価値)比率を正社員100とした場合、管理職のパート92.5、一般パート77.6という結果が出た。つまり、正社員の仕事の価値が100に対する各パートの仕事の価値だ。

同一価値労働同一賃金の考え方に立てば、正社員が30万円なら仕事の価値の比率に応じて給与を支払わなければいけないとこになる。

では実態はどうなっていたのか。実際の正社員の給与を時給賃金に換算(ボーナス込み)すると正社員は時給2153円になった。それを先の比率でパートがもらうべき時給は管理職パート1991円、一般パート1671円になった。

ところが調査時点の実際の時給は管理職パート1377円(正社員時給の約36%減、もらうべき時給の約31%減)、一般パート1024円。つまり本来の仕事の価値からすればパートは正規社員より600円程度低かったのである。

同一価値労働同一賃金の視点に立てば、600円引き上げる必要があるということだ。

生協労連はこの調査結果から職務評価が労使交渉の重要な武器になることを発見し、現在各単組に広げる活動を展開している。

だが、実際には仕事の内容が生協ごとに微妙に違うので個々の職務評価が必要になる。研究者の協力を得るなど調査に手間がかかるが、すでに実施した生協では人事制度の改定に役立てているという。

ヨーロッパでは均衡・均等処遇や同一価値労働同一賃金の実現のために、不合理な差別に対しては罰則を設けるなど法的な後押しも実施している。

それに対して日本政府は「正社員登用」を呼びかけている程度にすぎない。しかし、2000万人近くまで膨れあがった非正規社員を正社員にするのはとうてい無理だろう。せめて同一価値労働同一賃金に近づくような政策を推進していくべきだろう。

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