〝若年寄〟を決め込むのは早すぎる

オリックスの社員に限らず、今の30代、40代の人たちを見ていて思うのは、バブル崩壊後の停滞の時代に育ったためか、何かを変えていこうという意思や覇気があまり感じられないということです。

社会全体にあきらめムードが蔓延し、何をやってもダメだという空気のなかで育ってきたわけですから、無理からぬことかもしれません。しかし、一昔前と比べてみると、停滞しているとはいっても高いレベルでの停滞であり、変わらないと思われていた世の中も今や確実に動いています。

若い人たちがさっさと自分の人生に見切りをつけて“若年寄”を決め込むのは早すぎるし、悲しむべきことです。もっと自分の可能性を信じて、新しいことにチャレンジしてもらいたいのです。

チャレンジするということは、とりもなおさず「リスクをとる」ということです。失敗を恐れていてはなにごとも始まりません。リスクをしっかりと受け止めつつ前に進むことで、新しい道が開けます。一歩前へと踏み出すことに不安を覚える人もいるでしょうが、何もしないでいることこそリスクと考えるべきです。なぜなら、動かないまま手をこまねいているうちに、世の中の変化に対応できなくなる可能性があるからです。

しかし、やみくもに突っ走ればいいかというとそうではなく、とるべきリスクを見きわめることが大切です。自分にとって価値のあるリターンが期待でき、仮に失敗したとしてもその経験が将来への糧になるようなリスク、すなわち「グッドリスク」をとることを目指していただきたいと思います。

では、新たなチャレンジに向けて、どのように一歩を踏み出したらいいか──。それはもちろん人から指図されることではなく、自分自身で考え実践すべきことです。しかし、若い世代のチャレンジを後押しするアドバイスはあってもよく、私が経験してきたことも多少はその役に立つかもしれない──そんな思いで、これからは自分の考えや知識を伝えていこうと決めたのです。

その手はじめとして、私なりの考えをまとめたのが『グッドリスクをとりなさい!』です。全体にやや辛口で、若い人たちにとっては耳の痛いことも忌憚なく書かせてもらいましたが、わかりやすさ、理解しやすさを心がけたつもりです。

世界が変化していくスピードは今後ますます加速し、グローバル市場での競争はさらに熾烈になっていきます。本書が、果敢に荒海に乗り出そうという若い人たちを鼓舞する一冊となれれば幸いです。

※本連載は書籍『グッドリスクをとりなさい!』(宮内義彦 著)からの抜粋です。

宮内義彦(みやうち・よしひこ)●オリックス シニア・チェアマン。1935年、兵庫県生まれ。58年関西学院大学商学部卒業。60年ワシントン大学にてMBAを取得後、日綿實業(現双日)入社。64年オリエント・リース(現 オリックス)に転ずる。70年取締役を経て、80年社長兼グループCEOに就任。2000年会長兼グループCEO、14年より現職。ACCESS取締役、ドリームインキュベータ取締役も兼務する。
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