インタビューの前、筆者は市役所内をそれとなく見てまわった。なるほど、身を乗り出して向かいの席の男性とおしゃべりに興じる市民課の女性職員、片肘をつきながらパソコンを叩く水道課の初老の職員、ロビーで堂々と血圧を測っていたシステム担当者……。インタビューを終えた5時過ぎには、庁舎の電気が消え、ほとんどの職員がさっと帰っていった。

阿久根市職員の給与明細トップ10
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阿久根市職員の給与明細トップ10

翌日、街に出て市民の声を聞いた。

08年に市の総務課長から「阿久根市美しい海のまちづくり公社」の事務局長へと転籍し、今回の市議選で「反市長」を訴えて当選した浜崎国治市議はこう反論する。

「阿久根市の職員給与は、県内の18市の中では16番目で、決して高いほうではない。行財政改革の結果、職員数も今では244人と02年に比べて100人も減っている。退職金も職員を減らすための必要経費で妥当だ」

市の元職員は、親切にも筆者らを豪邸に招き入れ、こう話してくれた。

「私は学校を出たときに銀行や生保の内定もあったけど、市役所を選んだ。お給料は民間のほうがよっぽどよかった。いまさら給料が高すぎると言われても……。家を建てて、子供を都会の大学に通わせたら、家計はきつきつ。第一、市職員の給料を下げたら、車も買い替えんようになるから、市の景気はもっと悪くなる」

阿久根駅前の商店街はすっかり廃れたシャッター通りだ。内陸のトンネルを通る九州新幹線の開業に伴い、JRの在来線は5年前に廃止された。第三セクター方式の鉄道会社として存続したが、経営は厳しい。駅前では客待ちのタクシーが列を成していた。厳しくなる一方の市民生活と、右肩上がりで増える一方の公務員給与。その対比がなんとも切ない。

(プレジデント編集部=撮影)