課税されずに子や孫に資産を譲れるとあらば、金持ちの祖父母、親には確かに耳に心地良い。自民、公明両党が昨年12月30日に決定した2015年度税制改正大綱は、そんな富裕層の資産譲渡を優遇した税制の創設や拡充がてんこ盛りだ。半面、消費増税で家計が圧迫される中間層以下の層は、完全に蚊帳の外に置かれてしまった。

与党の言い分は、「1600兆円超に膨らんだ個人金融資産の多くを占める高齢者資産の世代間移転を促し、経済活性化につなげる」。が、結婚、出産の費用から子どもの教育資金、稽古代までも限度額の範囲内なら資金贈与は非課税、果ては生涯最大の買い物である住宅取得への贈与額の非課税枠を拡大する金持ち優遇策のオンパレード。格差社会を一段と助長するとの批判が上がっても不思議ではないが、麻生太郎財務・金融相は「所得格差が促進されるより消費が喚起される効果が大きい」と、一向に意に介さない。

しかし、昨年の金融界最大の商品に育った少額投資非課税制度(NISA)に、新たに祖父母や親が子や孫の代理で口座を設け年80万円までの投資の運用益を非課税とする「子ども版」を創設するとなると、景気対策とはまったく別次元だ。極論すればゼロ歳児も口座が開け、富裕層の家庭に生まれれば祖父母や親の太いスネを末永くかじり続けられる。住宅取得への恩恵を含めれば、いわば富裕層の“ゆりかごから墓場まで”安泰な特権の“固定化”に、政府がお墨付きを与えたも同然だ。

一連の金持ち優遇税制は、非課税枠を1000万円から最大3000万円に引き上げる住宅取得資金贈与が消費増税を機に冷え切った住宅市場のてこ入れ策で、子ども版創設に加えて非課税枠を現行の年100万円から120万円に拡大するNISA本体の拡充策も、「貯蓄から投資」を促す政策という点で、一定の理解も得られよう。しかし、17歳以下の6人に1人が「貧困児童」とされる現実を抱えながら打ち出された金持ち優遇税制は、「貧困の継続・拡大」という負の連鎖を招きかねない。そこには成長最優先の「アベノミクス」の本質が透けてくる。