6.ブラック企業の末路「ゼンショー休業店続出」

人手不足で深夜の営業や休業に追い込まれたゼンショーは、今年7月「労働環境改善に関する第三者委員会」の調査報告書を出した。その中には、すさまじい長時間労働の実態が描かれていた。

同社の所定内労働時間は1日8時間だが、1日8時間、1カ月45時間、1年360時間を限度に労働時間を延長できる36協定を締結している。さらに特別条項で年6回を限度に1カ月80時間、1年750時間を限度に延長できる協定を結んでいた。

まさに長時間労働を許容する現行法の実態を示すものであるが、じつはそれすらも守られていなかった。

2012年度から13年度にかけて時間外労働に関する協定の限度時間を超える法令違反を含めて労働基準監督署から是正勧告を受けた数は62回もあった。

極めつけは、サービス残業を促す「労時売上」という指標だ。労時売上とは1人当たりの1時間当たりの売上金額のことであり、同社の重要な経営指標になっている。

勤務シフトの作成でも重要な役割を担っている。まず本部が予測する一定期間の売上高があり、それを本部が定める労時売上(設定労時)で割る。それによって売上高を達成するのに必要な労働時間を決定し、繁忙時や繁閑時の時間帯ごとに投入可能な従業員数を決めてシフトを作成する。

例えば、設定労時を仮に5000円と仮定し、PM6時から10時までの4時間をアルバイト2人にやらせたとする。労働時間は2人合計で8時間。設定労時を達成するには5000円×8時間=4万円の売上げが必要になる。

しかし、設定労時を高くすれば当然、達成できない。その結果、エリアマネージャー自らサービス残業を行い、アルバイトに対しても実際の労働時間を「デイリー勤怠報告書」に記録しないように求める実態もあった。

例えば3万7000円の売上げであれば、3万7000円÷8=4625円(労時売上)で未達となる。5000円を達成するためにアルバイトの労働時間を30分ずつ削り、計7時間(3万7000円÷7=5285円)にして設定労時をクリアするのである。

労時売上がサービス残業の温床となっているだけではない。

問題となったワンオペ(一人勤務体制)についても「予測売上額に応じて投入可能な労働時間が決定されるため、売上が小さいと見込まれる時間帯は必然的に一人勤務体制(ワンオペ)となる」(報告書)

と指摘している。

労時売上とは一言で言えば、従業員の労働時間を犠牲にして生産性を高めるという会社にとって好都合な仕組みである。トップダウンで労時売上が決められ、末端の従業員は抗うことはできない。

こうした構造はゼンショーに限らないかもしれない。人を一つのマシンと見なし、フル稼働して利益を稼ぐ経営者体質が変わらない限り、ブラック企業がなくなることはない。

(参考資料:「いい人」ほど絶対辞めさせないブラック企業のあんまりな手口 http://president.jp/articles/-/13423