2000年のITバブル崩壊で街は失業者だらけに

元々シリコンバレーは、景気の波が非常に大きい地域です。そもそもアメリカがそういうお国柄ですが、その中でもシリコンバレーは特に激しい。

00年ごろに起きたITバブルでは、盛り上がり方もすごかったのですが、はじけた後の落ち込み方はすさまじかった。引っ越しに使うレンタルトラックがシリコンバレーからなくなった、と言われるくらい、出ていく人が続出。失業者が街にあふれて、年単位で仕事がない、という状況で、自転車でもこぐか、と失業者がチームを組んでそこら中で走ったりしていました。

それからしばらくは低空飛行が続いたのですが、10年くらいからアーリーステージのベンチャー企業の動きが活発になってきたんです。その大きな要因となったのは、インターネットユーザーの爆発的な増加です。新興国や途上国でもネット環境が当たり前に整うようになり、スマートフォンも普及。その中で、空き部屋シェアサイトのAirbnbや、タクシーの配車サービスのウーバーなどが登場しました。

ネットがインフラとして定着したことで、起業するコストも驚くほど下がり、ベンチャー企業が激増。しかも、サービスが当たれば、あっという間にユーザーが数十万人という規模になり、大成功してしまう。実は、メガベンチャーが華々しく躍進する裏側では、圧倒的な数の負け組が存在するんですが、ともあれ一部の勝ち組は優秀なエンジニアをガンガン採用していきます。そこで給料は二の次、とにかく採用しろ、という流れになっています。

その一方で、エンジニアなら誰でもいいというわけでもありません。優秀な人とそうでない人の差はとても大きい。優秀でない人はいるだけで足を引っ張るので、いないほうがマシ、みたいなところもあるんです。だから、一部の有能で若いエンジニアをめぐり、激しい獲得競争になってしまう。

私は、19世紀の産業革命に次ぐ、“ソフトウェア革命”がいま起きていると思っています。ソフトウェアによって世界中でいろんな仕事が機械に置き換えられてきている。シリコンバレーはその中核地です。

ソフトウェアエンジニアは「自動化する側」で、ほかの仕事、特にサービス業やブルーカラーは「自動化される側」。自動化される側は職を失う危機にさらされる一方、自動化する側は巨万の富を手にする時代です。それがいま世界で起きていることだと思います。