あらゆる問題に取り組むことは不可能である

うちの部署の連中はいつも会議に遅れてくる。わが社の産休・育休制度はひどく不十分で、ITシステムは時代遅れだ。こうした職場の問題に腹立たしさを感じるのはよくあることだ。だが、愚痴をこぼすだけでなく行動を起こすとしたらどのようなときだろう。

ひとつ確かなことは、職場のあらゆる問題に取り組むことはできないということだ。人の持つ政治資本の量には限りがある。取り組みたい問題が極めて重要だと確信していても、一度にすべてに取り組んだら信用が損なわれるかもしれない。「ばかげたことで大騒ぎしたら、本当に大事なとき思いどおりにできないかもしれない」と、戦略コンサルタントで“Reinventing You: Define Your Brand, Imagine Your Future”(邦訳『「新しい自分」をつくる法』)の著者、ドリー・クラークは言う。また、「観察眼の鋭い問題解決者とみなされるか、人の気分を落ち込ませる名人とみなされるかは、その間にある1本の線を越えるかどうかで決まる」と、ハーバード・ビジネススクール・プレスの『HBR Guide to Office Politics』の著者で、『How Will You Measure Your Life?』(邦訳『イノベーション・オブ・ライフ』)の共著者、カレン・ディロンは言う。その線がどこにあるかを見きわめることが重要だ。『Rebels at Work: Befriending the Bureaucratic Black Belts and Leading Change from Within』をカルメン・メディナ(後半のケース参照)と共同執筆したロイス・ケリーは、賢い人間は時間とエネルギーを投入する価値がある問題は何かを慎重に見きわめると言う。問題が小さいものだろうと根本的なものだろうと、取り組むべきかどうかを判断する助けになる原則を紹介しよう。