「日本創成会議」が今年5月、人口減少に歯止めがかからず、最終的に消滅する可能性のある自治体が全国に896もあると指摘。少子化の事態の深刻さを改めて思い知らされた。こうした際にクローズアップされるのが「出生率」だ。しかし、この出生率のことをどれだけ理解できているのか。
その年に生まれた子どもの数を出産できる女性の数で割ったものと考える人が多い。しかし、国立社会保障・人口問題研究所の岩澤美帆室長は、「それですと、どの年齢の女性が多いかで指標が影響を受けて、国や時代で比較ができません。そこである年における年齢別の出生率を15歳から49歳までについて足し合わせた『期間合計特殊出生率』がよく用いられています」という。
ここで重要なことは「年齢別の出生率を足し合わせる」という点で、これを数式で表したものが図表の「Σ(シグマ)」を使った計算式だ。高校の数学で習ったシグマは「合計」を意味し、シグマの横にある計算を、下にある数字から上にある数字まで各々行い、それらをすべて合算する。
つまり、その年に年齢xの女性が産んだ子どもの数f(x)を分子に、その年の年齢xの女性の数g(x)を分母とする割り算を15~49歳まで順次行ってから合計する。
この期間合計特殊出生率は、仮に1人の女性がその年の年齢別出生率で一生の間に子どもを産むとしたときの出生数に相当し、その結果が直近の2012年では「1.41」だった。他国との比較が可能な10年時点は「1.39」で、確かに米国の「1.93」、フランスの「2.0」と比べても低い。
仮に生まれてくる子どもの男女比が1:1で、すべての女性が50歳以上まで生きるとすると、期間合計特殊出生率が「2.0」であれば人口は横ばいとなる。この人口横ばいを維持できるラインを「人口置換水準」と呼ぶ。「しかし、実際に生まれてくる子どもは男児が5%多かったり、亡くなってしまう女性もいるので、日本の人口置換水準は少し多めの『2.07』となっています」と岩澤室長はいう。
でも、この計算式でいくと、ある年齢の女性が1人しかいなくて、子どもを1人産んだら年齢別出生率は「1.0」。それだけで期間合計特殊出生率は跳ね上がるのだが、そんなことはありえないか……。