一瞬のインスピレーション

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
人材・組織コンサルタント/慶應義塾大学特任助教
福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体改革を担う「鯖江市役所JK課」、週休4日で月収15万円の「ゆるい就職」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施し、さまざまな企業の人材・組織開発コンサルティングなども行う。
若新ワールド
http://wakashin.com/

僕の「若新雄純」という名前について、最近よく聞かれます。本名なのか、何なのか。これまでの連載では、NEET株式会社や鯖江市役所JK課など、僕の具体的な活動に準ずる内容が主でしたが、今回は僕自身のだいぶパーソナルなことを書いてみたいと思います。

僕の活動のエネルギー源には、自分という存在に対する過剰なまでの好奇心と執着心があります。その自分への執着心があまりにも強すぎるために、自分を取り巻く環境や社会との接続点に異常に過敏で、そこから生じるズレや違和感などをなかなか素通りできません。昔、片思いしていた女の子に「いちいち大げさなんですよ……」と言われてかなり凹んだ事があります。

でも、まったくその通りです。そして、そんな自分を受け容れて、なんとか自分らしく生きられないものかともがいてきた。その非常に辛気臭い葛藤が、僕のこれまでの研究や活動を支えてきたのだと思います。そんな「自意識過剰な僕」を象徴する一番の出来事は、何年か前に名前を戸籍上から変えたことです。

「若新」は生来の本名ですが、「雄純」は自分で改名したものです。大学院生くらいのときからこの名前を通称として使い始め、何年か前に必要な法的手続きを経て戸籍上から改名しました。

いまでもよく覚えていますがこの名前を考えついたのは、ある夜、自宅近くの新宿のファミレスでのこと。友達と食事しながら、「名前を変えようと思うんだけど」と言って、ノートにいろいろ書き出していました。珍しい「若新」という名字はかなり気に入っていたので、それに馴染むような名前ということで、30分ほど考えました。両親の名前の漢字などもいろいろアレンジしたりして、「雄純」としてみたら、なぜか、ものすごくしっくりきました。画数とか、そういうことはまったく気にしていません。一瞬のインスピレーションです。「いい! これでいこう」と迷いなく決めました。

それからすぐに、この名前を通称として使い始めましたが、周りからは、「なんの心境の変化?」とか、「ただの気まぐれで、そのうち元の名前に戻すだろう」などと言われて、あまり真に受けてもらえません。イベントの参加名簿などにも、わざわざ前の名前が記載されていたり(その時点ではそれが本名ですが……)。どうせ自意識過剰で自分に執着するなら、とことんやるつもりだったので、家庭裁判所に相談に行き、法的に必要な改名手続きの準備もすぐに始めました。