2014年7月18日(金)

今こそ経営学を学ぶべき3つの理由

しごとの未来地図

PRESIDENT 2014年8月4日号

著者
入山 章栄 いりやま・あきえ
早稲田大学ビジネススクール准教授

入山 章栄1972年生まれ。96年慶應義塾大学経済学部卒業、98年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院博士号取得。ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て、13年より現職。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)がある。

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答える人=早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄 構成=荻野進介 写真=時事通信フォト
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昨年秋に、私(早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄氏)は10年住んだアメリカを離れて日本に帰国しました。帰国した当初は軽い「浦島太郎」状態でした。しかし、そのおかげで、逆に10年前と現在の日本社会の変化をより実感できる立場にあるのではないかと思っています。そうした変化を経営学的に捉えながら、ビジネスパーソンへの示唆をお話ししたいと思います。

なぜプロ経営者が増えているのか

まず結論からいいますと、この10年で、日本の企業社会はよりよい方向に進化を遂げたと私は考えています。具体的には次の3点においてです。

サントリー社長に就任予定のローソン新浪剛史会長。(写真=時事通信フォト)

第一に、経営戦略・ビジョンが明確な「経営者の顔が見える企業」が明らかに増えてきたことです。柳井正さん、孫正義さんといったカリスマ創業者が牽引する企業はもとより、元米GE副社長の藤森義明さん率いるLIXIL、元ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長の松本晃さんが社長に就いたカルビー、日本マクドナルド会長の原田泳幸さんをトップに据えたベネッセホールディングスなど、旧来の日本企業の中にも、トップの顔が見える企業が急速に増えています。伝統的日本企業だった資生堂は日本コカ・コーラの社長だった魚谷雅彦氏を、サントリーはローソン会長の新浪剛史さんをトップに迎えました。複数の企業を渡り歩くプロ経営者が育ってきたということでしょう。

私が日本を離れた10年前は、これほど「経営者の顔が見える企業」は多くありませんでした。著名な経営者もいましたが、その多くは製品開発の功労といったことで内部昇格したようなプロパー経営者でした。

経営学的には、このことは今後の日本において、経営戦略・リーダーシップの果たす役割がさらに大きくなることを示唆しています。少子化による市場の成長鈍化、IT技術の進展などによる技術革新のスピード化、そして何よりグローバル化による競争の激化により、以前のように「優れた製品をつくっていれば、なんとか収益性を保てる」という時代ではありません。

このような時代には、経営者が自社の置かれている事業環境を把握し、経営資源を見極め、そのうえで明確な戦略を定めていかなければなりません。そして前回もお話ししましたが、そのためには、何よりも経営者の示すビジョンが重要であり、それを伝える力が必要です。

これらのことはすべて、アメリカのビジネススクールで学ぶ「いろはのい」です。逆に言えばこのような素養を体現したビジネスリーダーが台頭してきたことは、今後の日本では経営学的な考え方が求められる局面がさらに増える、ということだと思います。

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