2014年6月17日(火)

「残業代狙い」の働き方をどうやってなくすか

しごとの未来地図

PRESIDENT 2014年6月30日号

著者
鶴 光太郎 つる・こうたろう
慶應義塾大学大学院 商学研究科教授

鶴 光太郎1960年生まれ。東京大学理学部数学科卒業。オックスフォード大学Ph.D.(経済学)。経済企画庁、OECD経済局エコノミスト、経済産業研究所上席研究員などを経て、2012年4月より現職。安倍政権の規制改革会議・雇用ワーキンググループ座長を務める。

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慶應義塾大学大学院 商学研究科教授 鶴 光太郎 構成=宮内 健 PIXTA=写真
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労働時間制度のモデルは工場労働者

安倍首相から「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい、新たな労働時間制度の仕組みを検討してほしい」と指示が出されたことをきっかけに、新しい労働時間制度の設計に注目が集まっています。

本稿を執筆している時点では今後、どのように政策が動いていくのかは流動的な状況ですが、世の中でやり取りされている議論を見ていると「残業代ゼロ法案」と残業代を支払うかどうかに問題が矮小化されたり、現状の制度に関しても正しく理解されていない部分があったりするように感じます。

現在の労働時間管理の基本モデルは工場労働者です。みんなで朝、決まった時間に始業して機械を動かし、お昼になったら一斉に休憩をとり、定時がきたら機械を止めて終業するような働き方のイメージで、そこでは一律な労働時間管理が行われることになります。

ところがホワイトカラーを中心にそうしたタイプとは異なる働き方が広がり、成果を時間で測ることが難しい労働者が増えました。ITの発展などによって、時間や空間を共有しなくてもチームで仕事をできる状況が生まれたことも、こうした動きを後押ししています。

一律の労働時間管理がなじまない人たちに従来の方法を適用することは、長時間労働を招く一因にもなっています。問題を解消するためには労働時間の長さと賃金のリンクを切り離し、その働き方にあった労働時間制度の構築が必要になってきます。

現在、一律の労働時間管理になじまない働き方を対象とした制度としては、裁量労働制と管理監督者の適用除外があります。「要するに、どちらも残業代がつかない仕組みですね」と理解している人が多いようですが、この2つの制度は仕組みがまったく異なります。

裁量労働制には時間の枠組みがあります。つまり、労働時間の計算を実労働時間ではなく「8時間仕事をしたとみなしましょう」とみなし時間で行っているのです。

ただし、裁量労働制を適用された労働者が深夜残業や休日出勤をすると、雇用者はその分の割増賃金を払わなければなりません。

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