「答えを与える」学問ではない

日本の未来が明るい3つの兆し

最後は、起業を考える若い人たちが明らかに増えてきたことです。

少し前に、私は勤務先である早稲田大学ビジネススクールの社会人学生の入学志望者の面接を行う機会がありました。志望者の平均年齢は30代半ば程度でしょうか。多くは、国内有力企業の若手管理職や中堅社員などです。そして、その志望者の中の驚くほど多くが、「将来的に起業を一つの選択肢として考えている」と話していたのが、私には印象的でした。

もちろん、彼らが実際に将来起業するとは限りません。しかし少なくとも、彼らの意識の中に起業が選択肢として存在するというのは、以前との大きな違いではないでしょうか。そしてこのこともまた、経営学の重要性が増してくることを示唆します。なぜなら、起業志望者が増えていることは、「経営者を志す人が増えている」ことにほかならないからです。

これまで述べてきたことを総合すると、これからの日本は「一人ひとりが、経営・経営学を学ぶことが重要な時代」になってきたといえます。何より、みなさんがキャリアをつくっていくことは、ご自身の「キャリアの経営」を考えることにほかなりません。

もちろん、企業が置かれる状況がそれぞれ違うように、一人ひとりのキャリアパスも違います。決して「唯一の成功法則」があるけではありません。しかし、みなさんが置かれている環境が違うからこそ、考えを巡らせるための「思考の羅針盤」が必要なのです。

経営学は決して「答えを与える」学問ではありませんが、「考えるための羅針盤」としては役に立ちます。だからこそ世界中のビジネススクールで教えられているのです。このことを意識されて、ぜひ経営学を学んでみてください。これからのみなさんの辿るキャリアがよき航海となることをお祈りします。

(構成=荻野進介 写真=時事通信フォト)
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