5月24日、中国空軍のSU-27戦闘機が海上自衛隊のOP3C画像情報収集機、航空自衛隊のYS11EB電子測定機の計2機に30~50メートルという距離まで異常接近した。問題は接近距離ではない。このSU-27が、航空自衛隊並みの規模と装備を備える海軍の航空部隊ではなく、空軍のものだということだ。どこのメディアもここには触れず、防衛省も発表していない。そもそも空軍戦闘機と海軍戦闘機の識別そのものが極めて難しいから、仕方がないのかもしれない。
今回は洋上であるにもかかわらず、空軍機がスクランブル発進してきた。これが意味するところは何か?
単に洋上なら「領海侵犯」となるが、これは船舶が侵犯した場合。「洋上の領空侵犯」は航空機が対象になるが、中国の場合は海軍の戦闘機が対応することになっている。さらに「領土上空の領空侵犯」は、中国本土の領空ということになるので、空軍の戦闘機が対応することになっている。
今回は洋上であるにもかかわらず、海軍機ではなく空軍機が対応した。これは自衛隊機に対し、「中国“領土”から出ていけ」と言っているのだ。領海でも領空でもなく「領土」。「今になって『防空識別圏』を設定した中国のしたたかさ」(http://president.jp/articles/-/11550)でも触れたが、東シナ海の大陸棚の先端、沖縄トラフ(細長い海底盆地)までオレのものだ、と言葉だけでなく物理的にもアピールしているのだ。
ちなみに、台湾付近に配備されている中国の戦闘機も空軍機だ。台湾は中国にとっては自国領だから台湾空軍との戦闘は空軍が担当することになる。恐らく南沙諸島も同様に空軍担当となるだろう。
今後、中国の空軍戦闘機は空中給油機、早期警戒管制機(AWACS)を随伴し、中国が自国領と主張する沖縄トラフ付近まで接近してくるだろう。
果たしてそのとき、日本政府に何ができるだろうか?
竹島を韓国機に領空侵犯されたときのような、お決まりの「外交ルートでの抗議」では事は収まらないだろう。事実、韓国機は竹島の領空侵犯を続けている。
いうまでもなく、日中間には尖閣諸島の問題がある。ここを中国空軍機に領空侵犯される日も遠くはないかもしれない。